実務の森|フクロウハイツ編「接道義務」ってなに?
“道路に接していないと建物が建てられない”という話
モーリーとニャッタは、森の一角にある賃貸アパート「フクロウハイツ」にやってきた。
🐈ニャッタ:「ここって、なんだか入り口がせまいね…」
🦉モーリー:「うん、接道義務を満たしているか、ちょっと気になるね。」
接道状況に不安があるフクロウハイツ。
不動産の評価にあたっては、こうした接道義務を満たしているかどうかの確認が欠かせない。
今回は、そんな“接道義務”の基本について、モーリーたちと見ていこう──。
「旗竿地」ってどんな土地?
🐿️レコル:「フクロウハイツの敷地、“旗竿地”ってよばれる形なんだって!
道路に接している“竿”の部分を通って、奥の“旗”部分に建物があるんだよ。」
- 形が“旗+竿”に似ていることから「旗竿地」と呼ばれる。
- 「竿」の部分が道路に接し、「旗」の部分に建物を建てる。
- この“竿”の幅が2m未満だと、接道義務を満たさず、建築に制限が出ることがある。
🦉モーリー:
「実は、建築確認を受けている建物でも、“今の基準で再建築できるかどうか”は別の問題になることがあるんだ。
とくに昔の建物や旗竿地は、接道義務を満たしているかどうかを再確認しておくと安心だよ。」

接道義務とは?──再建築できるかどうかの条件
🏛 建築基準法 第43条(建築物の敷地と道路との関係)【抜粋】
建築物の敷地は、建築基準法第42条の道路に2m以上接しなければならない。
建築基準法では、建物の敷地について──
「幅員4m以上の道路に、2m以上接していなければならない」
と定められています。
この条件を満たさないと、原則として建築や再建築ができません。
これが「接道義務」と呼ばれるものです。
つまり、旗竿地のような敷地でも、
✅道路と接する“竿”部分が2m以上
✅道路の幅員が4m以上
であることが建築の前提になります。
この「接道義務」を満たしていないと、原則として建物の再建築はできません。
そのため、建物が建っている土地においても接道状況の確認は重要です。
🦉モーリー:「注意点として、道路に2m接してても、その道が“建築基準法の道路”じゃないと意味がないんだ。」
🐈ニャッタ:「えっ、道ならなんでもいいわけじゃないの?」
🦉モーリー:「うん、“建築基準法第42条に定められた道路”っていうルールがあるんだよ。詳しくはまた別のところで説明するね。」
📝ポイントまとめ:
- 対象となる道路は、建築基準法第42条に規定されたものに限られる
- どんなに見た目が立派な道でも、法律上の“道路”でなければ意味がない
- 接している長さが「2メートル未満」だと、原則として建物は建てられない
🦉モーリー:「立派に見えても、その道が“法42条の道路”じゃないと、接道義務を満たさないんだよ。
実は、昔の開発道路や私道には、意外と多いんだ。」
旗竿地の場合は
- “道路に接する部分”だけでなく、竿の奥まで通じる「通路部分」も含めて常に2m以上でなければならない。
- つまり、途中でくびれて 1.8mになるような部分があるとアウト❌
モーリー:「なぜなら、緊急車両の通行などに支障が出るおそれがあるからだよ。
竿の「長さ」については、明確な制限がないけれど、“非常時に支障がある”ような長さは許可されないことがあるんだ。
だから、評価時には、役所の「建築指導課」に確認するのが安心だよ。」
🦉モーリーのひとこと
実務では「前面道路は42条の道路か?」と「敷地はそこに2m以上接しているか?」を
セットで確認するのが大事だね🦉
“接してるつもりが、ちょっと足りない…”なんて事例もあるから要注意。
🧯なぜ「2m以上の接道」が必要なの?
それは──命を守るためなんだ。
- 火事が起きたとき、消防車が建物のそばまで入れるように
- 急病人が出たとき、救急車がすぐ来られるように
- 災害時に、避難経路をしっかり確保するために
➡️ この「2m以上」という接道幅は、
**緊急車両が安全に通れる“最低限の基準”**として建築基準法で定められているんだ。
さらに──
建築基準法では「延焼防止」や「空地の確保」も大きな目的のひとつ。
➡️ 道路の幅が「4m以上」とされているのは、
火の広がりを防ぎ、消防活動をしやすくするため。
それに、道路には建物が建っていないから、日照・採光・通風の確保にもつながるよ。
つまり──
🚪敷地ごとの“出入り口”は2m以上
🛣️まち全体の“安全通路”としては4m以上
どちらも、命と暮らしを守るために大切なルールなんだ。
📉接道義務が評価に与える影響
不動産の鑑定評価においても、
**「その土地に建物を建てられるかどうか」**は、
評価額に影響する重大なポイントなんだ。
- 接道義務を満たしていない = 再建築不可の可能性
- 建物が建てられない → 駐車場や資材置き場などの限定的利用に
- 結果として、土地の価格が大きく下がることもある
接道状況は、鑑定評価でも最初にチェックすべき重要項目なんだよ。
⚠️接道義務には、例外もあるけれど…
接道義務には、特別な条件のもとで建築が認められる例外もあります:
- 建築基準法第42条2項道路(みなし道路)
昔から使われている幅員4m未満の道で、一定の要件を満たす場合に「道路」とみなされます。
※敷地の一部をセットバックして使うことが条件になる場合もあります。 - 建築基準法第43条第2項の特例許可
建築基準法上の道路に接していない敷地でも、特定行政庁が安全性や避難経路などを審査して、接する通路または空地が避難・通行上支障がなく、一定の基準を満たしていると認められた場合、その敷地の建築を許可するケース(第43条第2項第1号)や、個別の建築計画について、防火・衛生・安全面で支障がないと判断された場合に、建築審査会の同意を得て特別に許可されるケース(第43条第2項第2号)があります。 - 都市計画区域外などの地域
都市計画区域や準都市計画区域の外では、接道義務が適用されない(または緩和される)ケースがあります。
🦉モーリーのひとこと
「建物は、どんな土地でも、自由に建てていいわけじゃないんだ。
みなし道路なら、条件を満たせばOKだけど──
建築基準法上の道路に接していない土地は、“特別な許可”がいることもあるよ。
建てる前には、かならず専門家(建築士など)や役所(建築指導課)に相談してね!」
💡モーリーのフクロウメモ
「接道義務は、“命を守るためのルール”。
接道していないと、そもそも建物が建てられない or 再建築できないことがあるんだ。
鑑定評価では、“その土地にどんな建物が建てられるか”=土地のポテンシャルがとっても重要。
だから、接道状況によって、評価額が大きく変わることもあるんだよ。」
まとめ──“道路に接していなければ、建てられない”
✅ 建物の敷地は、幅員4m以上の道路に、2m以上接していなければならない。
✅ 評価や売買においても、接道義務を満たしているかどうかはとても重要(再建築の可否が価格に大きく影響する)。
✅ 道があっても、建築基準法上の「道路(法42条道路)」でなければ、接道義務を満たしたことにはならない。
→ この法42条道路の種類については、別の記事で紹介するね。
📝なお、「旗竿地」のような敷地では──
✅ 通路(竿)部分の幅が全体にわたって2m以上あること
✅ 通路が極端に長くないこと(実務上は10〜20mが目安)
これらが、建物を建てられるかどうかに影響します。
くわしくは、自治体ごとに判断基準が異なることもあるので、あらかじめ確認しておくのが安心だね。
