森のひとコマ

森のひとコマ|第二夜:ゆらめく湯けむりの夜

雪の森に立つ「わさびの沢 奥湯」の看板とランタン。湯けむりが漂う夜のアイキャッチ画像。
モーリー

モーリーはそっとランタンを岩の上に置き、

「ふぅ……やっと着いた。」

と羽をふくらませた。

そこには、「わさびの沢 奥湯」と書かれた

小さな木の看板が雪の中にたたずんでいた。

森の奥は、雪が深くて歩きづらい。

けれど──この湯のあたたかさを思い出すと、

どうしても来たくなってしまう。

湯は静かで、ぽこん……と、時おり小さな泡があがり、

夜の冷たい空気の中で、その音だけがやさしく響いた。

モーリーは足元の雪をそっと払い、

片足を湯へ近づける。

——ちょん。

「……あつい。」

モーリーは小さく肩をすくめ、

羽先をそっとふるわせた。

しかし、すぐに気を取り直し、

もう一度ゆっくりと湯へ足を沈めた。

「……これは、羽の芯まであったまる。」

湯気がふわりと立ちのぼる。

そのとき、ふと視線の先で、

湯けむりの向こうにヤマネコとリスのシルエットが

ゆらりと揺れた。

モーリーは思わず小さく笑った。

——みんな、ここに来てたんだね。

冬の森の奥にある温泉で、ふくろうのモーリーが湯気越しに仲間のシルエットを見つめている様子
ゆらめく湯けむりの向こうに、仲間の姿が浮かぶ。
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