森のひとコマ

森のひとコマ|夏の風に、うなぎの香り

うなぎを焼くフクロウの店主と、香ばしい湯気がただよう和の店内のイラスト
モーリー

森の風が、少しだけ熱を帯びてきたころ。

木々のあいだにただよう、あの香り立つ甘い煙に、ニャッタは思わず足を止めた。

のれんをくぐった先にあるのは、静かなうなぎ屋。

店主のフクロウが、身じたくを整え、丁寧にお重を仕上げていく。

炭火の上でふっくらと焼かれたうなぎに、特製のタレがとろりと重ねられ、

やがて、つややかな「うな重」と、澄んだ肝吸いが運ばれてきた。

ひとくち口に運ぶと、ふんわりとした身と、香ばしい香りが広がる。

ニャッタはゆっくりと目を細め、静かにその味を味わっていた。

向かいのモーリーは、箸をすすめながら、何も言わずにうな重を楽しんでいる。

店内には、風鈴がかすかに鳴り、夏の気配が静かに満ちていた。

──夏の風に、うなぎの香り。

森の一日が、ゆっくりと静かに、味わい深く流れていく。

夏の夜の森で、うな重を前にフクロウとネコが食事を楽しむイラスト
涼やかな風鈴の音、うなぎ処 森のやにて──
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