森のひとコマ

森のひとコマ|いしゃなかせ

ランタンを灯して並んで座るフクロウとリス。森の奥で「いしゃなかせ」の葉を見つめている。
モーリー

森のはずれ、古い切り株のそばに、

多肉の葉っぱが、ひっそりと生い茂っている。

モーリーは、夜露をまとった葉を羽の先でなでながら、そっとつぶやいた。

「この葉っぱはね、いしゃなかせって、いうんだよ」

レコルが目をまるくした。

「えっ…お医者さんを泣かせる葉?」

モーリーは、そっと目を細めて、うなずいた。

「この葉っぱを傷にぬれば、すぐによくなるから、

お医者さんの出番がなくなって、困ることからきてるんだ」

レコルは、ちょこんとしゃがんで葉っぱをのぞきこみ、

小さくつぶやいた。

「……でも、ほんとうに効くの?

それに、なんだか──ギザギザしてて、さわるとちょっと痛そう。」

モーリーはふふっと笑って、羽を軽くふるわせた。

「ほんとうに効くかどうかは、わからない。

でも──この葉っぱは、

いつも森のみんなのそばにいて、

その日常に、そっと寄り添ってきたんだ。

そのとげとげのなかにも、やさしさがつまってるんだよ」

夜風がふわりと吹きぬけ、

葉っぱのうえの夜露が、ひとつ、ぽたりとこぼれ落ちた。

夜露にぬれた多肉の葉にとまる、白い蝶のアップ。
夜露をまとう、いしゃなかせ
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