森のひとコマ|夕暮れのファンタジー
モーリー
ミッドナイト不動産鑑定
夜の森に、すこしだけ風が通った。
レコルは、ひとりで高い木にのぼって、星を見ていた。
手には、まだ名前も書かれていない短冊。
「一番伝えたい願いごとって、なにかな?」
そうつぶやいて、レコルは短冊を握りしめた。
たくさんあるけど、どれかひとつって言われたら──
なぜだか、書けない。
森の日常をことばにするのは得意なのに、
じぶんのこととなると、むずかしい。
そっと息をはいたとき、
笹の葉が、さらさらと風になびいて、静かに揺れた。
その音に、迷いがすこし、ほどけていった。
レコルは、ゆっくりとペンを走らせた。
「これでよし」
レコルはつぶやいた。
笹の葉が風に揺れたその瞬間、
短冊が星の光を反射して、輝いてみえた。
結ばれた短冊には、こう書かれていた。
「この森が、変わらずここにありますように。」