森のひとコマ|ふくろう茶の夜
モーリー
ミッドナイト不動産鑑定
(※本記事は、鑑定評価の実務とは一切関係ありません。)
「モーリーさん、この事務所には、冷蔵庫ってないんですか?」
モーリーは、くるりと首をまわして答えた。
「あるよ。」
「えっ、あるんですか?」
ニャッタの耳が、ぴくりと動く。
モーリーは羽根を広げ、森の中を小走りで進んでいく。
しばらくすると、小さな沢にたどり着いた。
水がこんこんと流れ、わさびがひっそりと茂っている。
「ここが、わさびの沢。冷蔵庫だよ。」
水辺に目をやると、モーリーが沈めていたのは、
レモンサワーの小瓶だった。
モーリーは、羽根でそっと瓶をすくい上げ、
静かに、栓を抜いた。
しゅっ、と小さな音が、夜にとけていく。
ちびちび。ごくごく。
こっくり甘い、レモンの味。
ニャッタは目を細めて、ぽつりと言った。
「モーリーさん、ここは……最高の冷蔵庫ですね。」