第2章:依頼を受ける
モーリー
ミッドナイト不動産鑑定
不動産の鑑定評価の結果は、その利用者の意思決定を左右し、ときには大きな経済行動の根拠となることもあります。
だからこそ、鑑定士には「専門性」とともに、「誠実性(中立性・公正性)」が強く求められます。
信頼される鑑定評価とは、鑑定評価額を導くまでの過程と、誠実な姿勢から生まれるものです。
ニャッタ:「モーリーさん。不動産の鑑定評価って、依頼者さんの期待を背負うプレッシャー、ありますよね……。」
モーリー:「ホーホー、それは自然な感覚だよ、ニャッタ。依頼者さんは、何かしらの期待を抱いて依頼してくるからね。でも──」
モーリー:「その期待に引っ張られてしまったら、評価の中立性が揺らいでしまう。一度流されれば、次も、その次も、自分で自分を守れなくなってしまうんだ。」
ニャッタ:「……じゃあ、やっぱり中立性を守るって、ぼくら自身のためにもすごく大事なんですね。」
モーリー:「そう。中立性は、ただの理想じゃない。長い目で見れば、それがいちばん大きな“ビジネスの力”になるんだよ。目先の甘い報酬に飛びついて信頼を失えば、本当なら築けたはずの将来の仕事も、全部失ってしまう。」
ニャッタ:「なるほど……。イソップ物語みたいですね。川に映った肉を欲しがって、もともとの肉まで落としちゃう犬の話……あれ、ぼく、すごく覚えてるんです。」
モーリー:「ホーホー、まさにその通りだよ。目先の欲に流されて、社会から託された信頼を、自分の手で投げ出してしまう。それこそ、誠実な専門家がいちばんしてはならないことなんだ。」
ニャッタ:「信頼は、一朝一夕で得られるものではなくて、誠実な姿勢を積み重ねていくことが大事なんだね。“この鑑定士さんに頼みたい”と思ってもらえるようになりたいな。」