実務の森

【コラム】信頼される評価とは

フクロウのモーリーが羽ペンで書き物をし、ヤマネコのニャッタが驚いた表情で見つめる。ランタンの光に照らされた夜の森の事務所の一場面。
モーリー

不動産の鑑定評価の結果は、その利用者の意思決定を左右し、ときには大きな経済行動の根拠となることもあります。

だからこそ、鑑定士には「専門性」とともに、「誠実性(中立性・公正性)」が強く求められます。

信頼される鑑定評価とは、鑑定評価額を導くまでの過程と、誠実な姿勢から生まれるものです。


信頼される鑑定士であるために、大切な2つの姿勢

  • 鑑定評価の結果について、依頼者にわかりやすく説明する

     → 専門用語に頼らない姿勢が、信頼をつくります。
  • 依頼者の期待に対して、中立な立場を保つ

     → 依頼の目的や背景に配慮しつつも、鑑定評価の中立性を守ること。それが、本当の意味での誠実さです。

ニャッタとモーリーの会話:依頼者の期待と誠実な姿勢

ニャッタ:「モーリーさん。不動産の鑑定評価って、依頼者さんの期待を背負うプレッシャー、ありますよね……。」

モーリー:「ホーホー、それは自然な感覚だよ、ニャッタ。依頼者さんは、何かしらの期待を抱いて依頼してくるからね。でも──」

モーリー:「その期待に引っ張られてしまったら、評価の中立性が揺らいでしまう。一度流されれば、次も、その次も、自分で自分を守れなくなってしまうんだ。」

ニャッタ:「……じゃあ、やっぱり中立性を守るって、ぼくら自身のためにもすごく大事なんですね。」

モーリー:「そう。中立性は、ただの理想じゃない。長い目で見れば、それがいちばん大きな“ビジネスの力”になるんだよ。目先の甘い報酬に飛びついて信頼を失えば、本当なら築けたはずの将来の仕事も、全部失ってしまう。」

ニャッタ:「なるほど……。イソップ物語みたいですね。川に映った肉を欲しがって、もともとの肉まで落としちゃう犬の話……あれ、ぼく、すごく覚えてるんです。」

モーリー:「ホーホー、まさにその通りだよ。目先の欲に流されて、社会から託された信頼を、自分の手で投げ出してしまう。それこそ、誠実な専門家がいちばんしてはならないことなんだ。」

ニャッタ:「信頼は、一朝一夕で得られるものではなくて、誠実な姿勢を積み重ねていくことが大事なんだね。“この鑑定士さんに頼みたい”と思ってもらえるようになりたいな。」

川辺で肉をくわえた犬が水面に映る影を見つめている様子。森の奥からモーリーとニャッタが静かに見守っている。寓話から、不動産鑑定評価における中立性と誠実な姿勢を説く。
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