各論第3章 証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価
第1節 証券化対象不動産の鑑定評価の基本的姿勢
■ 証券化対象不動産
この章において「証券化対象不動産」とは、次のいずれかに該当する不動産取引の目的である不動産又は不動産取引の目的となる見込みのある不動産(信託受益権に係るものを含む。)をいう。(1)資産の流動化に関する法律に規定する資産の流動化並びに投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託に係る不動産取引並びに同法に規定する投資法人が行う不動産取引(2)不動産特定共同事業法に規定する不動産特定共同事業契約に係る不動産取引(3)金融商品取引法第2条第1項第5号、第9号(専ら不動産取引を行うことを目的として設置された株式会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第2条第1項の規定により株式会社として存続する有限会社を含む。)に係るものに限る。)、第14号及び第16号に規定する有価証券並びに同条第2項第1号、第3号及び第5号の規定により有価証券とみなされる権利の債務の履行等を主たる目的として収益又は利益を生ずる不動産取引
(不動産鑑定評価基準各論第3章第1節Ⅰ)
証券化対象不動産の鑑定評価は、この章の定めるところに従って行わなければならない。この場合において、鑑定評価報告書にその旨を記載しなければならない。証券化対象不動産以外の不動産の鑑定評価を行う場合にあっても、投資用の賃貸大型不動産の鑑定評価を行う場合その他の投資家及び購入者等の保護の観点から必要と認められる場合には、この章の定めに準じて、鑑定評価を行うよう努めなければならない。
(不動産鑑定評価基準各論第3章第1節Ⅰ)
各論第3章第1節に規定する証券化対象不動産については、従前に鑑定評価が行われたものを再評価する場合にあっても、各論第3章に従って鑑定評価を行わなければならないものであることに留意する必要がある。
(留意事項Ⅹ1)
第3節 処理計画の策定
■ エンジニアリング・レポート
エンジニアリング・レポート(建築物、設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った証券化対象不動産の状況に関する調査報告書をいう。以下同じ。)
(不動産鑑定評価基準各論第3章第3節Ⅰ(3))
証券化対象不動産の鑑定評価に当たっては、不動産鑑定士は、依頼者に対し当該鑑定評価に際し必要なエンジニアリング・レポートの提出を求め、その内容を分析・判断した上で、鑑定評価に活用しなければならない。ただし、エンジニアリング・レポートの提出がない場合又はその記載された内容が鑑定評価に活用する資料として不十分であると認められる場合には、エンジニアリング・レポートに代わるものとして不動産鑑定士が調査を行うなど鑑定評価を適切に行うため対応するものとし、対応した内容及びそれが適切であると判断した理由について、鑑定評価報告書に記載しなければならない。
(不動産鑑定評価基準各論第3章第4節Ⅲ(1))
エンジニアリング・レポートの活用に当たっては、不動産鑑定士が主体的に責任を持ってその活用の有無について判断を行うものであることに留意する必要がある。また、エンジニアリング・レポートの内容の適切さや正確さ等の判断に当たっては、必要に応じて、建築士等他の専門家の意見も踏まえつつ検証するよう努めなければならないことに留意する必要がある。既存のエンジニアリング・レポートの活用で対応できる場合がある一方、エンジニアリング・レポートが形式的に項目を満たしていても、鑑定評価にとって不十分で不動産鑑定士の調査が必要となる場合もある。
(留意事項Ⅹ3(2))
■ 証券化関係者
依頼者が証券化対象不動産の証券化に係る利害関係者(オリジネーター、アレンジャー、アセットマネジャー、レンダー、エクイティ投資家又は特別目的会社・投資法人・ファンド等をいい、以下「証券化関係者」という。)のいずれであるかの別
(不動産鑑定評価基準各論第3章第3節Ⅲ(1))
第5節 DCF法の適用等
■ DCF法の適用(証券化対象不動産)
証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、DCF法を適用しなければならない。この場合において、併せて直接還元法を適用することにより検証を行うことが適切である。
(不動産鑑定評価基準各論第3章第5節)
■ 収益費用項目
DCF法の適用により収益価格を求めるに当たっては、証券化対象不動産に係る収益又は費用の額につき、連続する複数の期間ごとに、次の表の項目(以下「収益費用項目」という。)に区分して鑑定評価報告書に記載しなければならない(収益費用項目ごとに、記載した数値の積算内訳等を付記するものとする)。
(不動産鑑定評価基準各論第3章第5節Ⅱ(1))
■ 運営収益(証券化対象不動産)
貸室賃料収入:対象不動産の全部又は貸室部分について賃貸又は運営委託をすることにより経常的に得られる収入(満室想定)/共益費収入:対象不動産の維持管理・運営において経常的に要する費用(電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用を含む)のうち、共用部分に係るものとして賃借人との契約により徴収する収入(満室想定)/水道光熱費収入:対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用のうち、貸室部分に係るものとして賃借人との契約により徴収する収入(満室想定)/駐車場収入:対象不動産に附属する駐車場をテナント等に賃貸することによって得られる収入及び駐車場を時間貸しすることによって得られる収入/その他収入:その他看板、アンテナ、自動販売機等の施設設置料、礼金・更新料等の返還を要しない一時金等の収入/空室等損失:各収入について空室や入替期間等の発生予測に基づく減少分/貸倒れ損失:各収入について貸倒れの発生予測に基づく減少分
(不動産鑑定評価基準各論第3章第5節Ⅱ(1)表)
■ 運営費用(証券化対象不動産)
維持管理費:建物・設備管理、保安警備、清掃等対象不動産の維持・管理のために経常的に要する費用/水道光熱費:対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用/修繕費:対象不動産に係る建物、設備等の修理、改良等のために支出した金額のうち当該建物、設備等の通常の維持管理のため、又は一部がき損した建物、設備等につきその原状を回復するために経常的に要する費用/プロパティマネジメントフィー:対象不動産の管理業務に係る経費/テナント募集費用等:新規テナントの募集に際して行われる仲介業務や広告宣伝等に要する費用及びテナントの賃貸借契約の更新や再契約業務に要する費用等/公租公課:固定資産税(土地・建物・償却資産)、都市計画税(土地・建物)/損害保険料:対象不動産及び附属設備に係る火災保険、対象不動産の欠陥や管理上の事故による第三者等の損害を担保する賠償責任保険等の料金/その他費用:その他支払地代、道路占用使用料等の費用
(不動産鑑定評価基準各論第3章第5節Ⅱ(1)表)
■ 運営純収益/純収益/一時金の運用益/資本的支出
運営純収益:運営収益から運営費用を控除して得た額/一時金の運用益:預り金的性格を有する保証金等の運用益/資本的支出:対象不動産に係る建物、設備等の修理、改良等のために支出した金額のうち当該建物、設備等の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する支出/純収益:運営純収益に一時金の運用益を加算し資本的支出を控除した額
(不動産鑑定評価基準各論第3章第5節Ⅱ(1)表)
収益費用項目においては、信託報酬、特別目的会社・投資法人・ファンド等に係る事務費用、アセットマネジメントフィー(個別の不動産に関する費用は除く)等の証券化関連費用は含まないこと。「純収益」は償却前のものとして求めることとしていることから減価償却費は計上しないことに留意する必要がある。また、各論第3章第5節Ⅱ(1)の表に定める「運営純収益」と証券化対象不動産に係る一般の開示書類等で見られるいわゆる「NOI(ネット・オペレーティング・インカム)」はその内訳が異なる場合があることに留意する必要がある。
(留意事項Ⅹ4(2))