森のひとコマ

森のひとコマ|秋の演奏家に

森の夜、草むらに置かれたきゅうり、遠くに光る虫の目。
モーリー

森の奥から、リーン…リーン…と、小さな音が聞こえてきた。

モーリーは足をとめて、耳をすます。

「秋の虫たちも、そろそろ出てきたみたいだね」

枝の上からレコルがのぞきこむ。

「今夜は、スズムシの演奏会かな?」

どこかで、小さな葉っぱがそっと揺れた。

そのとき──

するするとレコルが木から降りてきて、草むらの近くにそっと何かをおいた。

「きゅうり、“スズムシの好物”なんだ」

モーリーが目をまるくして見つめると、

スズムシの影がそっと近づいてきた。

「ほんとに来たね」

「秋の演奏家に、プレゼントだよ」

月夜の草むらで、レコルがスズムシにきゅうりをプレゼントしている。
秋の演奏家への贈り物
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