森のひとコマ

森のひとコマ|キノコが鳴く夜

夜の森で、丸い鉄板の上に美味しそうに焼けたしいたけが並ぶアイキャッチ画像
モーリー

わさびの沢の奥深く、

モーリーは、平らな石の上に鉄板を置き、

しいたけを一つ、また一つと手際よく並べていく。

かさに残ったしずくが、ランタンの灯りできらりと光る。

火を入れると、

しいたけがゆっくりと息をはじめた。

ふつ…ふつ……

そして──

「きゅーっ。」

レコルがびくっと立ち上がり、

耳をぴんとすませる。

“なに今の……”

さらに、もう一度、

「きゅっ。きゅっ。」

としいたけが鳴いている。

レコルは胸の前で前足をそろえ、

しいたけをのぞきこむ。

モーリーは、焼き色を確かめるように鉄板を見つめ、

目を細めて小さくつぶやいた。

「……いい焼きかげんだよ。」

そういうと、醤油をひとしずく慎重に落とす。

じゅ……。

冬の森に、

香ばしいきのこの香りがひろがる。

その香りにそっと包まれるように、

レコルのしっぽがふわりとふくらんだ。

冬の空気が、ゆっくりと澄んでいく。

モーリーは静かに言った。

「……食べごろだよ。」

わさびの沢のほとり、モーリーとレコルが丸い鉄板の上で焼けるしいたけを見つめている挿絵
モーリー、こだわりの焼きしいたけ。
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