森のひとコマ

森のひとコマ|第一夜:モーリーの雪道

雪の上に残るモーリーの足跡と、ランタンの灯りが照らす夜の森のワンシーン
モーリー

雪の夜。

モーリーは、ひとつのランタンを手に、森の奥へと歩いていた。

「きゅっ、きゅっ」と雪を踏む音だけが、しずかに響く。

風は止まり、吐く息は白くすっとほどけていく。

こんな夜に、どこへ──?

それを知っているのは、モーリーだけ。

ときどき立ち止まっては、

誰かを待つように、森の影をじっと見つめる。

「道に迷ったわけじゃないよ。」

小さくつぶやくと、羽をふくらませて雪を防いだ。

森の奥へ進むほど、

空気はひんやりとして、雪はしんしんと深くなる。

木々の影は長くのび、ランタンの光も細くゆれる。

それでもモーリーは歩みをやめない。

まるで、

森のどこかにある“あたたかい何か”に

呼ばれているかのように──。

やがて、雪の奥に、かすかに光るものが見えた。

気づいたモーリーは、羽に積もる雪をそっとふるい落とし、

クチバシをかすかにほころばせた。

雪の森をランタンを手に歩くモーリーの後ろ姿と足跡のイラスト
雪の夜道をランタンとともに進むモーリー
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