不動産にかかる税金を読む
取得・保有・売却の三つの局面
はじめに
| 🐿️……不動産の税金は、難しそうだよね。けれど、よく眺めてみると、買うとき、持っているとき、売るとき── 全ての局面で、不動産は課税対象になります。本書では、不動産にまつわる税金をひとつずつ見ていきます。 |
不動産にかかる税金は、所得税や法人税のように一つの法律にまとまっているわけではない。地方税法、登録免許税法、租税特別措置法、所得税法など複数の法令にまたがり、しかも軽減措置や時限的な特例が幾重にも重なっている。はじめて触れる人にとって、その全体像はややつかみにくい。
もっとも、これらの税は、課されるタイミングで整理するとずいぶん見通しが晴れる。すなわち、不動産を取得するとき、保有しているとき、そして売却するとき。本書はこの三つの局面に沿って、四つの税──固定資産税・都市計画税、不動産取得税、登録免許税、譲渡所得税──を順に読み解いていく。
本書は、不動産にかかわる人が、制度の輪郭をひととおり把握するための本である。マイホームを購入する人、賃貸物件を所有する人、相続で不動産を引き継いだ人、あるいは不動産の評価や登記の周辺で学んでいる人──対象は広い。それぞれの税について、どのような場面で、どのようなしくみで課されるのか、その概略を順に追っていくことを心がけた。
本書に記した税率・期限・要件は、本稿執筆時点(2026年5月)の制度に基づいている。税制は毎年の改正で姿を変えるため、「いま、そのときの数字」を確かめるには、つねに一次資料に立ち返る習慣を持ちたい。本書は、その立ち返り先を見失わないための地図として用いてもらえれば十分である。
第一章 三つの局面で読む──全体像
不動産に関わる税金は、発生する場面で整理するのがいちばんわかりやすい。取得の局面、保有の局面、売却の局面。三つの場面はそれぞれ別の法律によって組み立てられており、課税の主体も、計算のしくみも少しずつ異なる。
三つの局面、四つの税
まずは、それぞれの場面でどの税が登場するのか、ひととおり並べておく。
| 局面 | 登場する税金 | 課税主体 | 課税のかたち |
| 取得 | 不動産取得税 | 都道府県 | 取得時に1回 |
| 取得(登記) | 登録免許税 | 国 | 登記のたびに |
| 保有 | 固定資産税・都市計画税 | 市町村 | 毎年(1月1日基準) |
| 売却 | 譲渡所得税(所得税・住民税) | 国・地方 | 売却益が出た年に1回 |
ここから読みとれる概略はいくつかある。第一に、不動産の税金は国税と地方税から構成されている。第二に、いずれの税も、評価額や売買価格といった「不動産の価値」を入口にして計算される。第三に、軽減措置や特例の多くが時限的に設計されており、ある年に有効だった軽減が、別の年には期限を迎えていることがある。
制度は更新される。本書がたびたび「適用期限」「改正の見込み」と書き添えるのは、その前提を読者と共有するためである。
評価額という共通の入口
四つの税のうち三つ──不動産取得税・登録免許税・固定資産税──は、いずれも「固定資産税評価額」を出発点として税額を算出する。譲渡所得税だけは売買時の譲渡対価と取得費から差し引くかたちで計算するため、評価額からは少し距離があるが、それでも取得費の算定にあたって評価額が手がかりとなる場面は多い。
固定資産税評価額は、市町村が「固定資産評価基準」に従って算定する。3年に1度の評価替えを基本とし、土地は地価公示価格のおおむね7割を、建物は再建築価格をもとに経年減点補正率などで調整した額を、一つの目安としている。実際の取引価格や時価とは前提も方法も異なるが、この評価額が複数の税で使われていることは、押さえておきたい。
| 不動産の評価額は複数ある 公示価格、基準地価、相続税路線価、固定資産税評価額。同じ「不動産の価格」をめぐって、目的の異なるいくつもの「評価」が併存している。 公示価格を「1」とすれば、相続税路線価はおおむね「0.8」、固定資産税評価額はおおむね「0.7」。それぞれの位置関係を読むための目安として知っておくとよい。 |
第二章 保有の局面──固定資産税・都市計画税
不動産を所有しているあいだ、毎年静かに課されるのが固定資産税と都市計画税である。両者は通常、一枚の納税通知書にまとめられ、4回に分けて納付するのが一般的だが、根拠法と性格は少し異なる。
二つの税の輪郭
固定資産税は地方税法第341条以下に、都市計画税は同法第702条以下に規定されている。前者は市町村が一律に課す財産税であり、後者は都市計画事業や市街地開発事業の費用に充てるための目的税である。後者は市街化区域内の土地・家屋にのみ課税される。
| 賦課期日 | 毎年1月1日(地方税法第359条) |
| 納税義務者 | 賦課期日時点で固定資産課税台帳に登録されている所有者 |
| 課税標準 | 固定資産税評価額(価格) |
| 税率 | 固定資産税は標準税率1.4%(同法第350条)/都市計画税は制限税率0.3%(同法第702条の4) |
| 納期 | 原則として年4回(市町村の条例で定める。6月・9月・12月・翌2月などが多い) |
| 納付方法 | 市町村から送付される納税通知書による |
税率について、固定資産税の1.4%はあくまで「標準税率」であり、市町村の判断で異なる率を定めることができる。実際には全国の大多数の市町村が標準税率を採用しているが、まれに1.5%、1.6%といった超過税率を採用する自治体もある。都市計画税の0.3%は「制限税率」、すなわち上限であり、これを下回る税率を定めることはできるが超えることはできない。
評価額──3年に1度の評価替え
固定資産税評価額は、原則として3年に1度の評価替え(地方税法第409条)によって価格が見直される。直近の評価替えは令和6年度(2024年度)に行われており、次回は令和9年度の予定である。評価替えの年を基準年度といい、2年目と3年目はそのまま据え置かれるのが原則だが、地価が著しく下落している地域については、「下落修正」の特例措置によって修正されることがある。
価格は固定資産課税台帳に登録され、毎年4月1日から3週間程度のあいだ、台帳の閲覧と縦覧(自分の資産だけでなく、ほかの不動産との比較ができる)が認められている。価格に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会への審査の申出という独立の不服申立制度が用意されている。価格そのものを争うための、税の世界に固有の手続きである。
住宅用地の特例──課税標準の圧縮
自らの居住用、あるいは賃貸の住宅が建っている土地については、課税標準を大幅に圧縮する「住宅用地の特例」(地方税法第349条の3の2)が設けられている。土地を住宅の用に供するという公的な要請に応じた、構造的な軽減である。
| 区分 | 対象面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
| 小規模住宅用地 | 200㎡以下の部分 | 課税標準1/6 | 課税標準1/3 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 課税標準1/3 | 課税標準2/3 |
住戸1戸あたりの面積で判定する点に注意したい。たとえば一戸建てで敷地面積が400㎡なら、200㎡までが小規模住宅用地、残り200㎡が一般住宅用地として扱われる。なお、家屋の床面積の10倍を超える部分は、住宅用地として認められない。
| 空き家と特例の解除 空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、著しく管理不全な空き家が「特定空家等」または「管理不全空家等」に指定され、市町村長から勧告を受けると、その敷地は住宅用地の特例の対象から外される。 特例が解除されると課税標準は元の評価額に戻るため、結果として税負担が大きく変わる。相続した実家など、しばらく使われていない不動産を抱える際には、空き家に対する行政上の指導や勧告が、税負担にも関わってくる点を意識しておきたい。 |
新築住宅に対する減額措置
一定の要件を満たす新築住宅は、建物部分の固定資産税額が一定期間にわたり2分の1に減額される(地方税法附則第15条の6)。これは課税標準の特例ではなく、税額そのものへの減額措置である。
| 区分 | 減額期間 | 減額の対象 |
| 一般の新築住宅 | 新築後3年度分 | 床面積120㎡相当分まで・税額1/2 |
| 新築のマンション等(中高層耐火建築物) | 新築後5年度分 | 同上 |
| 認定長期優良住宅 | 戸建ては5年度分・マンション等は7年度分 | 同上 |
床面積の要件は、戸建てが50㎡以上280㎡以下、共同住宅は40㎡以上280㎡以下が原則である。本特例の適用期限は、本稿執筆時点では令和8年(2026年)3月31日までとなっており、令和8年度税制改正において令和10年(2028年)3月31日までの2年延長が要望・検討されている。最新の適用期限は国土交通省・総務省の公表資料で確認されたい。
税額が動くとき
固定資産税の税額は、評価額の改定や住宅用地特例の適用・解除によって、年ごとに静かに動く。とくに評価替えの年と、新築減額の終了年には、納税通知書の金額が前年から変わることが多い。所有者の側から見ると、ある年に税額が急に増えたり減ったりするように映る場面もあるが、背景にどの制度が動いているのかを知っていれば、その変化はおおむね読み解くことができる。
第三章 取得の局面(一)──不動産取得税
不動産を取得したとき、都道府県から1回だけ課されるのが不動産取得税である。地方税法第73条以下に規定された地方税で、売買・新築・増改築・贈与・交換など、所有権の取得を広く課税対象としている。相続による取得は、課税の対象外である。
基本の構造
| 課税主体 | 都道府県 |
| 納税義務者 | 不動産を取得した者(個人・法人を問わない) |
| 課税標準 | 固定資産税評価額(売買代金や建築費ではない) |
| 税率(本則) | 4% |
| 税率(軽減) | 土地および住宅は3%(令和9年〔2027年〕3月31日までの取得) |
| 納付時期 | 取得から半年〜1年程度を経て、都道府県税事務所から納税通知書が届く |
税率は本則4%だが、住宅(自己居住用に限らない)および土地については、租税特別措置法による軽減税率3%が適用される。適用期限は令和9年3月31日までとされており、その後の取扱いは税制改正の動向に委ねられている。
課税標準は固定資産税評価額であり、実際の取引価格ではない。一般に評価額は時価より低めに設定されるため、計算上の税負担は表面の取引価格から想像するより軽くなる傾向にある。
宅地評価土地の課税標準の特例
宅地として評価されている土地については、課税標準を価格の2分の1に圧縮する特例が設けられている(令和9年3月31日までの取得が対象)。この特例は、3%の軽減税率と組み合わせて適用されることになる。
住宅・住宅用地の控除
住宅およびその敷地については、課税標準あるいは税額からまとまった控除が認められている。住宅取得を政策的に支えてきた経緯から積み重ねられた仕組みである。
住宅(建物)の課税標準の控除
| 住宅の区分 | 課税標準からの控除額 | 主な要件 |
| 新築住宅 | 1,200万円 | 床面積50〜240㎡(共同住宅の貸家は40〜240㎡) |
| 認定長期優良住宅 | 1,300万円 | 上記+長期優良住宅の認定(令和8年3月31日までの取得が対象。延長見込) |
| 中古住宅 | 築年・新耐震基準に応じ最大1,200万円 | 自己居住用・床面積要件・新耐震基準等 |
中古住宅の控除額は、新築された時期に応じて段階的に設定されている。新耐震基準(昭和56年6月1日以降の建築)に適合していることが主な要件となる。耐震基準適合証明書等で要件を満たすと、それ以前の住宅にも控除が及ぶ。
住宅用土地の税額の控除
一定の要件を満たす住宅用土地については、次のいずれか大きい金額が税額から控除される。
・45,000円
・土地1㎡あたりの評価額 × 1/2 × 住宅の床面積の2倍(1戸あたり200㎡を限度) × 3%
敷地の取得から一定期間内(原則として3年以内)に住宅を新築する、あるいは新築住宅とその敷地を併せて取得するといった要件が課されている。住宅建設を支援する制度趣旨を反映して、敷地と住宅の取得を時間的に結びつける作りになっている。
| 申告と通知の時間差 不動産取得税は、取得から半年〜1年ほどを経て納税通知書が届く。資金計画の上では「忘れた頃の請求」として記憶しておきたい。 軽減措置の多くは、取得後の申告(原則として取得から20日〜60日以内、期間は都道府県により異なる)が前提となる。何もしないと、軽減前の税額で通知される事例も少なくない。 令和8年度税制改正では、住宅および住宅用地の特例について床面積要件の下限を50㎡から40㎡へ引き下げる方向が示されているが、令和13年3月31日までは東京都の特別区において50㎡の据置きが続く点に注意したい。 |
第四章 取得の局面(二)──登録免許税
不動産の登記には、登録免許税(登録免許税法)が課される。所有権の保存・移転、抵当権の設定など、登記を申請するたびに国に納める国税である。司法書士へ依頼するときは、報酬とは別に司法書士が立て替え、後日精算するのが慣例となっている。
登記の場面と税率
登録免許税の税額は、「課税標準 × 税率」というシンプルな式で求められる。所有権関連の課税標準は固定資産税評価額、抵当権設定登記の課税標準は債権金額(借入金額)である。本則の税率と、住宅取得を支える軽減税率(租税特別措置法第72条以下)は次のとおり。本書執筆時点(2026年5月)で確認できる範囲で示す。
| 登記の種類 | 本則税率 | 軽減税率 |
| 所有権の保存(新築建物) | 0.4% | 0.15% |
| 所有権の移転(土地・売買) | 2.0% | 1.5% |
| 所有権の移転(建物・売買) | 2.0% | 0.3% |
| 所有権の移転(相続) | 0.4% | ─ |
| 所有権の移転(贈与) | 2.0% | ─ |
| 抵当権の設定 | 0.4% | 0.1% |
適用期限は次のように整理される。
・土地の所有権移転(1.5%)、土地の信託(0.3%):令和8年度税制改正により令和11年(2029年)3月31日まで延長。
・住宅用家屋の所有権保存(0.15%)、移転(0.3%)、抵当権設定(0.1%):令和6年度税制改正により令和9年(2027年)3月31日まで延長済。
住宅用家屋の軽減──証明書という鍵
住宅に関する軽減税率の適用を受けるためには、登記申請書に「住宅用家屋証明書」(市区町村長が発行)を添付する必要がある。床面積50㎡以上、自己の居住用、新築または取得後1年以内の登記といった要件を満たすことを市町村が確認し、証明書を交付するという段取りである。投資用ワンルームや別荘、店舗併用住宅の店舗部分などは、自己居住用ではないことから原則として軽減の対象とならない。
住宅用家屋証明書は、登記実務における通り道のような書類である。一般の取得者が直接手にする機会は多くないが、「登記費用が思っていたより高い」と感じる場面では、たいていこの証明書が取得できているかどうかが分岐点になっている。
計算例:新築マンションを取得したとき
理解の助けとして、建物の評価額2,500万円、土地の評価額1,500万円、住宅ローンの借入金額3,500万円という新築マンションの取得を想定し、軽減税率を用いて試算してみる。
| 登記 | 計算 | 税額 |
| 建物の所有権保存 | 2,500万円 × 0.15% | 37,500円 |
| 土地の所有権移転 | 1,500万円 × 1.5% | 225,000円 |
| 抵当権設定 | 3,500万円 × 0.1% | 35,000円 |
| 合計 | ─ | 297,500円 |
本則税率で計算した場合の合計は約94万円である。軽減税率の有無で約3倍の差が生じることになる。制度は静かだが、影響は決して小さくない。
第五章 売却の局面──譲渡所得税
不動産を売却して利益が生じたとき、その譲渡益に対して所得税および住民税が課される。給与所得などとは合算せず、別建てで税率を適用する「分離課税」とされている(租税特別措置法第31条・第32条)。
譲渡所得の組み立て
譲渡所得は、次の式で求められる。
譲渡所得 = 譲渡収入金額 − (取得費 + 譲渡費用) − 特別控除
取得費は購入代金、購入時の税金や手数料、リフォーム費用などの合計から、建物について減価償却相当額を差し引いたものとされる。譲渡費用は、仲介手数料、印紙税、解体費用などの直接的な売却経費を指す。
取得費を裏付ける契約書や領収書が残っていない場合、譲渡収入金額の5%を「概算取得費」として用いることが認められている(措法第31条の4)。便宜的な扱いであるが、結果として課税対象が大きくなる傾向があり、書類の保存の重要性を示す制度でもある。
税率──所有期間の境目
税率は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかによって大きく異なる。5年以下は「短期譲渡所得」として高い税率が、5年超は「長期譲渡所得」として相対的に低い税率が課される。期間の起算は「取得日から売却日まで」ではなく、「譲渡した年の1月1日時点」で判定される点に独特の癖がある。
| 区分 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
| マイホーム軽減税率 | 10年超(6,000万円以下の部分) | 10.21% | 4% | 14.21% |
所得税率には復興特別所得税(基準所得税額の2.1%、令和19年まで)が含まれている。10年超のマイホームに適用される軽減税率は、6,000万円を超える部分については長期譲渡所得の通常税率(20.315%)が適用される構造となっている。
居住用財産の特例
自宅(居住用財産)の売却には、税負担を実質的に大きく軽減するいくつかの特例が用意されている。いずれも、住み替えや終の住処をめぐる人の動きを税が妨げないよう、政策的に配慮されたものである。
3,000万円の特別控除(措法第35条)
自分が住んでいる家屋とその敷地を売却したとき、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる。所有期間の長短は問わない。実際に住まなくなってからの売却にも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までであれば適用が認められる。配偶者や生計を一にする親族、特殊関係法人など、いわゆる「特別の関係がある者」への売却は対象外である。
10年超所有のマイホームの軽減税率(措法第31条の3)
譲渡した年の1月1日において、家屋および敷地の所有期間がいずれも10年を超えるマイホームについては、3,000万円控除後の譲渡所得6,000万円以下の部分について、所得税10.21%・住民税4%(合計14.21%)の軽減税率が適用される。3,000万円控除との併用が認められている数少ない特例の一つである。
特定の居住用財産の買換え特例(措法第36条の2)
一定の要件を満たすマイホームを売却し、新たに別のマイホームに買い換えるとき、譲渡益への課税を将来へ繰り延べることができる。免除ではなく繰延である点、また3,000万円控除との併用ができない点に注意したい。住み替えの実情に応じてどの特例を選ぶかが、税負担を左右する。
被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円控除(措法第35条第3項)
相続した実家(被相続人が一人で住んでいた家)を一定の要件のもとで売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる。耐震改修または取り壊しを経たうえでの譲渡が要件とされており、地域に残る空き家の流動化を税の側から促す制度である。相続した空き家をどう扱うかを考えるとき、本制度を使えるかどうかは、処分の方針を大きく左右する。
確定申告という締めくくり
譲渡所得税の納税は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの確定申告期間に行う。特例を適用する場合は確定申告そのものが要件となっており、申告を怠ると3,000万円控除も軽減税率もそもそも受けられない。住民税の精算は、確定申告の内容に基づいて、その年の6月以降に納付書のかたちで送られてくる。
譲渡損が発生した場合にも、一定の要件のもとで他の不動産との損益通算や繰越控除が認められる(マイホームに係る譲渡損失の繰越控除など)。損失が出たから何もしなくてよい、ということにはならない場合がある。
おわりに──制度を読むということ
ここまで、不動産にまつわる四つの税を、取得・保有・売却という三つの局面に沿って読んできた。それぞれの税は別の法律に拠って動いているが、そのほとんどが「不動産の価値をどのように計るか」という問いを共有している。
本書で示した税率や期限、控除額は、あくまで現時点の制度に基づくものに過ぎない。とくに軽減措置の多くは時限的に設計されており、毎年の税制改正によって延長や見直しが繰り返されている。実際に数字を扱う場面では、必ず国税庁・法務省・総務省・国土交通省、あるいは各都道府県・市町村の最新の公表情報に立ち返ってほしい。
制度は更新される。それは制度の弱さではなく、制度が現実の動きに応えようとする姿である。読み筋さえ持っていれば、改正後の制度も、改正前と地続きのものとして読むことができる。本書が、そのための小さな手引きになれば幸いである。
| 🐿️ ……税率も、期限も、変わっていきます。 けれど、税がどんな局面で、どんなかたちで課されるか── その「立ち位置」のほうは、案外、長く変わりません。 数字が変わったとき、 「ああ、ここがこう動いたのだな」と気づける。 そのために、いまの制度のかたちを、静かに置いておく。 本書は、そういう一冊です。 |
【主な一次資料】
国税庁「タックスアンサー」(No.3208 長期譲渡所得の税額の計算、No.3211 短期譲渡所得の税額の計算、No.3302 マイホームを売ったときの特例、No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例 ほか)
国税庁「土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」(令和6年4月版、令和8年4月版)
国土交通省「住宅:新築住宅に係る税額の減額措置」「住宅:不動産取得税に係る特例措置」
国土交通省「令和8年度税制改正概要」(令和7年12月)
総務省「地方税制度:不動産取得税」「同:固定資産税」関連資料
地方税法、登録免許税法、租税特別措置法、所得税法 各条文
─── 不動産にかかる税金を読む / レコル出版 ───
本書は2026年5月時点で公表されている制度資料を参照して整理しました。
最新の税率・期限・要件は、必ず一次資料でご確認ください。