建築基準法上の道路を読む
── 道路の種類と性質を知る
まえがき
不動産の調査をしていると、必ずどこかで「道路」という言葉に出会います。
土地に建物が建てられるかどうか、どれくらいの規模で建てられるか、将来の建替えが可能かどうか。その多くは、敷地が接している「道路」がどのようなものなのかで、輪郭が決まっていきます。
建築基準法では、わたしたちが普段「道路」と呼んでいるもののうち、ある一定の条件を満たしたものだけを「道路」として扱っています。法律上の道路と、見た目の道路は、必ずしも一致しません。
この本では、建築基準法が「道路」と呼んでいるものの体系を、まず一度ゆっくり見渡してみたいと思います。個々の道路種別の細かな実務論点や、セットバックや再建築不可といったテーマは、それぞれが奥深く、ひとつの本として読み解く価値のあるものです。そうした各論は、これからの「読むシリーズ」のなかで、ひとつずつ静かに開いていけたらと思っています。
本書では、まず「建築基準法上の道路体系の全体像」を見渡すことを優先しました。
どんな種類があり、それぞれがどのような背景から生まれ、不動産の調査のなかでどこをどう確かめていくのか。その大きな流れを、夜の森でゆっくり読み直しています。
🐿️レコル:この本はね、建築基準法のなかで「道路」と呼ばれているものを、ひとつの体系として読み直していくよ。第42条の各項と、第43条の接道義務。ぜんぶつながっているから、まずは全体像を一緒に見渡してみよう。
第一章 はじめに ─ なぜ「道路」を読むのか
不動産と道路の関係
一筆の土地があったとき、そこに建物を建てられるかどうかは、その土地そのものの形や広さだけでは決まりません。
建築基準法は、原則として、都市計画区域および準都市計画区域の内部にある建築物の敷地は、建築基準法上の道路に二メートル以上接していなければならない、というルールを置いています(厳密には、第43条第1項そのものに区域要件は記載されておらず、第41条の2に基づく集団規定の適用区域に建つ建築物に対して接道義務が課される構造で、第68条の9に基づく条例区域などにも及び得ます)。これを「接道義務」と呼びます。
この接道義務がうまく満たされないと、新たに建物を建てたり、建て替えたりすることが原則としてできなくなります。価格に向かう流れのなかで、道路の状況は、敷地の「使い方の自由度」をかたちづくる、入口にあたる要素のひとつです。
「見た目の道」と「法律上の道路」は別物
現地に立ったとき、目の前に舗装された道路があれば、それは当然「道路」のように見えます。けれども、建築基準法のなかで「道路」と呼ばれるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
たとえば、原則として幅員が4メートル以上あること。法律で定められた特定の根拠を持つ道であること。あるいは、建築基準法の施行以前から存在していた道であること。こうした条件のいずれかに当てはまるものだけが、建築基準法上の「道路」として扱われます。
逆に言えば、見た目には立派な舗装路でも、建築基準法上は「道路」とは扱われないものもあります。農道のような扱いになる道、私的に設けられた通路、過去に位置指定を受けていない私道など、姿はさまざまです。
本書の歩き方
本書では、建築基準法上の道路体系を、次のような順で読み直していきます。
- 第二章 道路体系の全体像 ─ 第42条と第43条の関係を、まず一枚の地図のように眺めます。
- 第三章 第42条の道路 ─ 5つの種別と、2項道路、そして指定にまつわる項を読みます。
- 第四章 第43条の接道義務 ─ 接道のルールと、その例外の整理をたどります。
- 第五章 道路種別の確認方法 ─ 役所調査と図面の読み方を整理します。
- 第六章 実地調査で確かめておきたいこと ─ 現地でひっそりと拾い上げたい視点を並べます。
まずは全体像を、肩の力を抜いて見渡していければと思います。
第二章 道路体系の全体像
二つの条文を、まず眺める
建築基準法のなかで「道路」を扱う中心的な条文は、第42条と第43条です。第42条は、何を「道路」と呼ぶのかを定義する条文。第43条は、その「道路」にどう接していなければならないかを定める条文です。
つまり、第42条で道路の輪郭が描かれ、第43条でその道路と敷地の関わり方が定められています。この二つの条文を、ひと続きの流れとして読むと、道路に関わるルールの全体像が、ずいぶん見通しやすくなります。
第42条 ─ 「道路」とは何か
第42条第1項は、原則として幅員4メートル以上の道のうち、次の5つに該当するものを「道路」とすると定めています。
- 第1号 道路法による道路(国道・都道府県道・市町村道など)
- 第2号 都市計画法・土地区画整理法等による道路(開発道路など)
- 第3号 建築基準法の集団規定が適用された際、既に存在していた道(既存道路)
- 第4号 道路法等により2年以内に事業執行が予定される道路として指定された道(計画道路)
- 第5号 土地所有者の申請に基づき、特定行政庁から位置の指定を受けた道(位置指定道路)
これに加えて、第42条第2項では、建築基準法の集団規定が適用された際、既に建築物が建ち並んでいた幅員4メートル未満の道で、特定行政庁が指定したものを「道路とみなす」と定めています。いわゆる「2項道路」「みなし道路」と呼ばれるものです。
さらに、第42条第3項以下では、特別な区域での幅員の取扱いや、特定行政庁による指定に関する例外的なルールが置かれています。
第43条 ─ 道路との関わり方
第43条第1項は、建築物の敷地は、建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければならないという接道義務を定めています。
そして第43条第2項では、その例外として、一定の基準に適合し、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認めた場合に、認定または許可によって建築を認める仕組みが置かれています。
一枚の地図として眺める
こうして並べてみると、建築基準法上の道路に関わる規定は、ざっくりと次のような構造になっていることがわかります。
・ 第42条第1項各号 ── 原則的な5種類の「道路」
・ 第42条第2項 ── 幅員4メートル未満の「みなし道路」
・ 第42条第3項~第6項 ── 指定や幅員に関する例外規定
・ 第43条第1項 ── 接道義務
・ 第43条第2項 ── 接道義務の例外(認定・許可)
「何を道路と呼ぶか」と「その道路にどう接するか」。この二つの軸を頭の片隅に置きながら読み進めると、個々の条文の位置がずいぶん見えやすくなります。
🐿️レコル:建築基準法の道路の話はね、種類だけを暗記しようとすると、すぐに迷子になっちゃう。だから、まずは「定義(42条)」と「接道義務(43条)」の二つに分けて、地図を一枚もっておくのが落ち着いて読むコツだよ。
第三章 建築基準法上の道路(第42条)を読む
第42条第1項 ─ 原則としての5つの道路
第42条第1項は、原則として幅員4メートル以上ある道のうち、次の5つの号に該当するものを「道路」と定義しています。建築基準法の「道路」と聞いたときに、まず思い浮かべたいのは、この5種類です。
第1号 道路法による道路
国道・都道府県道・市町村道のように、道路法に基づき認定・管理されている道路で、幅員4メートル以上のものです。いわゆる「公道」の中心になる道路で、もっとも一般的なイメージに近いものです。
管理者は国・都道府県・市町村などで、道路台帳が整備され、認定幅員や路線番号などが管理されています。実務では、まず「道路法による道路(国道・都道府県道・市町村道など)」に該当するかを確認します。
第2号 都市計画法・土地区画整理法等による道路
都市計画法、土地区画整理法、旧住宅地造成事業に関する法律、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律など、特定の法律による事業として整備される道路です。
開発許可を受けて造られる開発道路や、土地区画整理によって整備された街区の道路が、ここに位置づけられます。公道として最終的に市町村などに引き継がれる場合も多い種別です。
第3号 既存道路
建築基準法の集団規定が、その区域に適用されるに至った際、現に存在していた幅員4メートル以上の道で、第1号・第2号・第4号・第5号のいずれにも該当しないものです。集団規定が適用された時点ですでに「道」として使われていたものが、そのまま道路として位置づけられる、と読むとイメージしやすい種別です。
古くからの市街地に多く見られ、所有形態は公有・私有さまざまです。建築基準法の集団規定がその区域に適用されるに至った時点で、すでにその地域で道として機能していたものを、そのまま「道路」として認める、という発想に支えられています(昭和25年11月23日以降に都市計画区域・準都市計画区域に編入された地域では、その編入告示日が基準時点となります)。
第4号 計画道路(2年以内に事業執行予定の道路)
道路法、都市計画法、土地区画整理法などの法律に基づき、新設または変更の事業計画があり、事業者の申請等に基づいて、2年以内にその事業が執行される予定のものとして、特定行政庁が指定した道路です。
まだ完成していない道でも、近い将来の整備が見込まれているものを、あらかじめ「道路」として扱うことで、その沿道の建築計画と整合させていく、という役割を担っています。
第5号 位置指定道路
土地を建築物の敷地として利用するため、新たに築造する道で、政令で定める基準に適合するものについて、その位置の指定を特定行政庁から受けたものです。一般に「位置指定道路」と呼ばれます。
分譲開発などで新たに私道を造る場面で登場することが多く、所有形態としては私道であることが大半です。指定を受けると、廃止や変更にも特定行政庁の手続きが必要になり、勝手に閉鎖したり構造を変えたりすることができなくなります。
🐿️レコル:1号から5号は、「もとからある公道」「事業で生まれる道路」「昔からの道」「これから整備される道」「個別申請で位置を指定された道」というふうに、生まれ方の違いで並んでいると考えると、頭に入りやすいよ。
第42条第2項 ─ みなし道路
第42条第2項は、建築基準法の集団規定が適用された際、既に建築物が建ち並んでいた幅員4メートル未満の道で、特定行政庁が指定したものを「道路」とみなすと定めています。これがいわゆる「2項道路」「みなし道路」です。
4メートルに満たない狭い道沿いに既存の建物が並んでいる地域は、現実には少なくありません。もし「4メートル未満は道路ではない」と単純に切ってしまうと、その沿道の多くの土地が再建築不可となり、市街地の更新が止まってしまいます。第2項は、そうした既成市街地の実態に対する、ひとつの調整の仕組みとして置かれています。
この第2項道路に接する敷地では、原則として道路中心線から2メートル後退した線が、新たな道路境界線とみなされます(一方が崖地・河川・線路敷地等に沿う場合には、その側の境界線から4メートルの線まで)。建物を建て替えるたびに、後退した位置で敷地を捉え直していくことになり、これが「セットバック」と呼ばれる仕組みです。
ここには、「いつかこの地域全体が、安全に通れる広さを備えた街並みになってほしい」という、長い目で見たまちづくりの願いが感じられます。
第42条第3項~第6項 ─ 指定や幅員の例外
第42条には、第3項以下にも、いくつか重要な項が置かれています。本書では全体像を見渡すために、ここでは輪郭だけを整理しておきます。
- 第3項 第2項道路について、土地の状況によりやむを得ない場合に、中心線からの水平距離を2メートル未満1.35メートル以上の範囲で(崖地・河川等に沿う場合は、その境界線からの水平距離を4メートル未満2.7メートル以上の範囲で)、別に指定することができるとする規定。
- 第4項 6メートル区域の指定があった場合の特例的な道路の扱い。一定の道について、6メートル未満でも道路として認める扱いを置く規定。
- 第5項 6メートル区域に関する規定の整理。
- 第6項 幅員1.8メートル未満の道を第2項に基づき道路として指定しようとするとき、又は第3項の規定により別に水平距離を指定しようとするときは、あらかじめ建築審査会の同意を得なければならないとする規定。
各項の細かな読み方は、地域ごとの運用や条例とあわせて整理する必要があります。本書では、こうした例外規定がある、ということを地図の中に位置づけるところまでにとどめ、それぞれの読み解きは、今後のレコル出版の本で、ゆっくり開いていけたらと思っています。
第四章 接道義務という入口(第43条)
第43条第1項 ─ 接道義務
第43条第1項は、建築物の敷地は、第42条に定める「道路」に2メートル以上接していなければならないと定めています。
この規定は、災害時の避難経路や、消防車・救急車などの緊急車両の通行を確保し、火災の延焼を抑え、衛生上の問題を防ぐといった、街全体の安全と暮らしやすさを守るための、いわば「最低限の入口の幅」を確保するためのものと考えられています。
条文の語り口は短いものですが、その背景には、建物が立ち並ぶ場所が、最低限「外につながっている」ことを守ろうとする発想があるように読めます。
第43条第2項 ─ 認定と許可(接道義務の例外)
第43条第2項は、第1項の例外を定めています。平成30年(2018年)改正前は、43条但し書きとして許可制のみが置かれていましたが、改正により、認定(第2項第1号)と許可(第2項第2号)の二段階に整理されました。
第2項第1号 認定
敷地の周囲の状況などについて、国土交通省令(建築基準法施行規則第10条の3)で定める一定の基準(利用者が少数である一戸建ての住宅等で、幅員4メートル以上の「道」に2メートル以上接するなど)に適合するものを、特定行政庁が認定して建築を認める仕組みです。建築審査会の同意は不要とされています。
従前の許可運用のうち、要件が比較的明確で、定型的に判断できるものを認定として整理した、と読むことができます。
第2項第2号 許可
敷地の周囲に広い空地があるなど、国土交通省令(建築基準法施行規則第10条の3)で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認め、建築審査会の同意を得て許可したものについて、建築を認める仕組みです。
いわゆる「43条但し書き」と呼ばれてきた運用は、現在この第2項第2号の許可に位置づけられています。許可は建築物ごとに個別に判断されるため、敷地の状況や用途、規模に応じて結論が変わり得ます。
接道の「数字」だけで読まない
実務では、「4メートル以上の道路に2メートル以上接していればよい」と、数字だけで片付けてしまいたくなる場面があります。けれども、現実の敷地は、間口だけ2メートルあって奥が広がる旗竿地や、複数の道に面した角地、私道のみに面した敷地など、さまざまな表情を持っています。
第43条が守ろうとしているのは、「敷地が、外の道路ネットワークに、ちゃんとつながっていること」だと読むことができます。条文の数字をなぞるだけでなく、その奥にある「つながり」を確かめにいく姿勢が、調査の場面では大切になります。
🐿️レコル:43条はね、第1項で原則、第2項で例外(認定と許可)という構造になっているよ。「但し書き」と呼ばれてきた運用は、いまは第2項第2号の許可に整理されているから、古い資料を読むときも頭の片隅に置いておくといいよ。
第五章 道路の種別を確認する ─ 役所調査と図面
確認の入口は、特定行政庁
ある道路が、建築基準法上、どの種別に位置づけられているかは、原則として、その地域を所管する特定行政庁(建築主事を置く市町村または都道府県)が把握しています。
都市部の多くの自治体では、建築指導課や建築安全課といった部署が、道路種別についての窓口になっています。一部の自治体では、道路種別図や指定道路図がインターネット上で公開されている場合もあります。
確認したい主な図面・資料
特定行政庁の窓口では、道路に関わる主な資料として、次のようなものを確認できることが多いです。自治体や道路種別ごとに整備状況は異なるため、すべてが揃うわけではないことに留意が必要です。
- 道路種別図(建築基準法上の道路区分を示した図)
- 指定道路図・指定道路調書(特定行政庁が指定した道路の図面と調書)
- 道路位置指定図(第42条第1項第5号の位置指定道路の図面)
- 道路台帳平面図(道路管理者が整備する道路の現況図)
- 認定幅員(道路管理者として認定している幅員)
- 道路区域図(道路法上の道路の区域を示す図)
- 建築計画概要書・台帳記載証明書(過去の建築確認の情報)
管理者の調査もあわせて
建築基準法上の道路種別とあわせて、道路管理者(道路法に基づく管理者)も確認します。第1号道路では、国・都道府県・市町村のいずれが管理しているのか、また私道部分が残っていないかも見ておきたい点です。
位置指定道路や2項道路は、私道として民有のままになっていることが少なくありません。所有形態によっては、通行や掘削、車両の出入りなどについて、所有者との関係を確認しておく必要が出てくる場合もあります。
インターネット情報の扱い
自治体によっては、道路種別の概略がウェブ上で確認できますが、公開されている情報の更新時期や精度は自治体ごとに異なります。実務での判断にあたっては、最終的には特定行政庁および道路管理者の最新資料を、窓口や所管部署で改めて確認する流れが安心です。
🐿️レコル:道路種別の確認はね、「特定行政庁(建築基準法)」と「道路管理者(道路法)」の両方を見ていくのが基本だよ。担当部署が違うことも多いから、最初に窓口を二つに分けて整理しておくと、調査がスムーズに進むよ。
第六章 実地調査で確かめておきたいこと
「現地で何を見るか」を、はじめに決めておく
インターネットで道路種別や認定幅員などの情報を確認したあと、現地では、その情報と実際の状況が一致しているかを確かめていきます。実地調査の前に、「何を見に行くのか」をあらかじめ整理しておくと、現地での見落としが減らせます。
現地で確認しておきたい主な視点
- 幅員 ── 道路の現況の幅員。役所の認定幅員と一致しているか、部分的に狭い箇所はないか。
- 接道の状況 ── 対象地が、どの道路にどのくらいの長さで接しているか。間口の有効幅員はどれくらいか。
- セットバックの有無 ── 2項道路の場合、対象地および向かい側の敷地で、後退した位置に擁壁・門・塀などが揃っているか、未後退の部分が残っていないか。
- 側溝・縁石・舗装 ── 道路の「縁」がどこにあるか。側溝や縁石の位置、舗装の継ぎ目の位置などから、現況の道路境界の手がかりを拾う。
- 通り抜けの可否 ── 行き止まり道路(袋路状道路)か、通り抜けが可能か。位置指定道路の場合、政令の基準との関係を意識する。
- 勾配 ── 急勾配の道路ではないか。車両進入や歩行に支障となる傾斜はないか。
- 階段道路 ── 階段状になっている道路の場合、車両通行ができない可能性が高い。建築基準法上の道路として扱われるかも含め、特定行政庁での確認が必要になることがある。
- 車両通行の可否 ── ガードレール、ボラード、ゲート、車止めなどによって、実質的に車両通行が制限されていないか。
- 私道部分の表示 ── 私道であることを示す看板、配管メーター、雨水排水の流末などから、所有形態のヒントを拾う。
- 計画道路や事業中の道路の進捗 ── 第4号道路や都市計画道路がある場合、現地の整備状況。
- 道路の用途 ── 通学路、緊急輸送路、バス通りなど、周辺の道路ネットワーク全体のなかでの位置づけ。
「数字どおりか」だけでなく、「使えるか」を見る
実地調査では、「役所の図面に書かれている幅員と現況が一致しているか」という確認だけでなく、「その道路が、実際にどのように使われているか」を見ておくことも大切です。
たとえば、形式上は接道義務を満たしている敷地でも、間口の前に電柱が立っていたり、消火栓があったり、勾配が急で車両進入が難しかったりと、現地ではじめて分かる事情が少なくありません。こうした情報は、後の価格形成や利用方法の検討に静かに効いてきます。
「不安なときは、特定行政庁に戻る」
現地で違和感を覚えたときは、もう一度、特定行政庁に確認へ戻る場面があります。
たとえば、図面上は2項道路として扱われていても、現況を見ると十分な幅員があるように見える場合があります。
逆に、資料と現況にズレを感じることもあります。
そのようなときは、指定状況や道路種別をあらためて確認していきます。
「現地で感じた違和感を持ち帰って、もう一度資料に戻る」という往復の動きは、調査の精度を支える、地味だけれども大切な動作のひとつです。
🐿️ レコル:道路の調査はね、まず現地で道の幅や接道の様子を見て、そのあと役所で道路種別や指定状況を確かめる。そして、資料と現地にズレを感じたら、もう一度戻って確認する。そういう往復になることが多いよ。
あとがき
建築基準法のなかの「道路」は、条文だけを追っていくと、号と項が入り組み、迷子になりやすい場所のひとつだと思います。
けれども、一歩引いて眺めてみると、そこには、「安全に建物へ出入りできるか」「街の中で通行や防災をどう確保するか」という問いが見えてきます。
第1号から第5号までの種別、2項道路、3項以下の例外、そして第43条の接道義務とその例外。それぞれは、時代ごとの市街地の事情と、そこに暮らす人たちの安全を守ろうとする工夫の積み重ねの上にあります。建築基準法の制定された昭和25年から、平成30年(2018年)の43条改正、令和4年(2022年)改正(一部は令和7年〔2025年〕4月から施行)に至るまで、規定は何度も読み直されてきました。
本書では、道路体系の全体像をひととおり見渡すところまでにとどめました。位置指定道路と再建築不可、43条認定・許可の運用、2項道路のセットバックなど、ひとつひとつのテーマには、もっとゆっくり時間をかけて読み直したい奥行きがあります。これからのレコル出版の本のなかで、ひとつずつ静かに開いていけたらと思っています。
外の世界にある制度を、夜の森のなかで読み直し、本のかたちにする。レコル出版のしごとは、これからも、その繰り返しです。
この本が、不動産の調査を始めたばかりの方の手元で、道路に向き合うときの小さな地図のようなものになれば、しずかに嬉しく思います。
レコル出版
編集日:2026年5月19日
この本の原典
この本は、以下の原典をもとに整理しています。
制度や運用は更新されるため、実務で利用する際は最新の原典をご確認ください。
・建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
・建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
・建築基準法施行規則(昭和二十五年建設省令第四十号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/325M50000800040
・建築基準法道路関係規定運用指針の解説(国土交通省、平成19年7月策定/平成21年1月改定)
https://www.mlit.go.jp/common/000214472.pdf
・建築:建築基準法上の道路情報の整備について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk5_000001.html
・接道規制のあり方について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001894185.pdf
・住宅:令和4年改正 建築基準法について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kenchikukijunhou.html
・改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する解説資料とQ&A(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_document.html
・第43条第2項に基づく認定・許可の取扱い(東京都都市整備局)
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku_kaihatsu/kenchiku_gyosei/gyosei/kijun/43
・公益社団法人 日本不動産鑑定士協会連合会 公表資料
https://www.fudousan-kanteishi.or.jp
※リンク先は、執筆時点で確認できたものを掲載しています。
レコル出版について
レコル出版では、外の世界にある制度や資料を、夜の森のなかで静かに読み直し、本のかたちにしています。
制度には、その時代の背景や考え方が映されています。レコル出版では、基準やルールだけでは見えにくい、制度の輪郭や、その奥にある考え方を、ゆっくり整理していきます。
制度や運用は更新・改正されるため、実務で利用する際は、必ず最新の原典本文をご確認ください。