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実務の森|マンションの管理費や修繕積立金は、何のために払うの? ──毎月のお金から見える、建物のこれから

モーリー
ニャッタ
ニャッタ

マンションの広告を見ていると、価格のすぐ近くに、こんな数字が並んでいることがあります。

「管理費 12,000円/月」

「修繕積立金 9,800円/月」

買ったあとも、毎月かかるお金。

家賃とは違うようですが、何のためのお金なのでしょうか。

そして、似たような部屋でもこれらの金額がマンションごとにずいぶん違うのは、どうしてなのでしょうか。

実は、この毎月支払うお金は、そのマンションの管理や修繕の状況を読み解く手がかりのひとつであり、購入判断や価格形成に影響し得ます。

今日は、管理費と修繕積立金という2種類の負担金について、何のためにあるのか、なぜ上がることがあるのか、そして価格にどう映るのかを、順に見ていきます。

ニャッタ
ニャッタ
モーリー
モーリー

1.管理費と修繕積立金、何がちがうの?

🦉モーリー:「まず、マンションは“自分の部屋”と、“みんなで支える部分”が組み合わさっている建物なんだ。」

マンションの各部屋は、それぞれの持ち主(区分所有者)のものですが、廊下やエントランス、エレベーター、外壁や屋上といった共用部分は、区分所有者みんなが原則として共同で所有し、管理組合という団体をつくって支えていく場所です。

その支え合いのために、区分所有者が管理組合へ納めているのが、管理費と修繕積立金です。

ちなみに、賃貸として借りて住んでいる場合、管理組合に対してこのお金を納める義務を負うのは、部屋の持ち主である区分所有者(大家さん)です。賃貸借契約の内容によっては、借主が共益費などとして実費の一部を負担することもありますが、管理組合への納付義務者はあくまで区分所有者です。

管理費は、主に、日々の暮らしを回すための日常的な管理に充てられるお金です。

共用部分の清掃、廊下の電球の交換、エレベーターの保守点検、共用部分の電気代や水道代、管理会社への委託費など。「いまの快適さ」を保つために使われていきます。

修繕積立金は、将来の計画的な修繕や、特別に必要となる工事・調査などに備えるお金です。

外壁の補修、屋上の防水、共用部分の給排水管の取り替えなど、何年かに一度やってくる大きな修繕のために、計画的に貯められていきます。なお、部屋の中(専有部分)のリフォーム費用は、原則としてここには含まれません。

国土交通省が管理規約のひな型として示している「マンション標準管理規約」でも、管理費と修繕積立金は区分して経理する形が示されています。

🐈ニャッタ:「使うお金と、貯めるお金なんだね。」

🦉モーリー:「そう。管理費は“いま”のため、修繕積立金は“将来”のため。だから片方だけ見ても、そのマンションのことは分からないんだ。」

2.修繕積立金は「将来の工事のための貯金」

🦉モーリー:「修繕積立金のほうは、長期修繕計画の話とつながっているよ。」

建物は、経年によって少しずつ古びていきます。

外壁のタイルや塗装、屋上の防水、共用部分の配管。こうした部分は、定期的に手を入れないと、建物の状態を保てません。

そこでマンションでは、これから何年後にどんな工事が必要になりそうか、それにいくらかかりそうかを見積もった長期修繕計画という計画を立て、それに合わせて毎月積み立てをしていきます。

外壁などをまとめて改修する大規模な修繕工事は、十数年ごとに計画されることが多いものの、適切な実施時期は建物の状態や工事の内容によって異なります。いずれにしても一度の工事に大きな費用がかかるため、そのときになって慌ててお金を集めるのではなく、長い時間をかけて少しずつ積み立てていこう、という考え方です。

🐈ニャッタ:「マンション全体の、積み立て貯金なんだね。」

🦉モーリー:「うん。そして大事なのは、この貯金が“足りているかどうか”は、マンションによってずいぶん違う、ということなんだ。」

3.どうして「上がる」ことがあるの?

🐈ニャッタ:「修繕積立金が値上がりして大変、って話を聞いたことがあるよ。どうして上がるの?」

🦉モーリー:「いくつかの理由が重なっていることが多いんだ。順番に見てみよう。」

3-1.最初は低めに設定されていることがある

修繕積立金の積み立て方には、大きくふたつの方式があります。

最初から最後まで同じ額を積み立てていく均等積立方式と、最初は低い額から始めて、段階的に引き上げていく段階増額積立方式です。

新築の分譲時には、段階増額積立方式が採られることが少なくないとされています。この場合、計画の上では、もともと「あとから上がる」ことが予定されているわけです。

ただ、いざ引き上げの時期が来ると、所有者の合意がうまく集まらず、計画どおりに上げられない、ということも起こりえます。

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、将来にわたって安定した積み立てができるという観点から、均等積立方式が望ましいとされています。また、2024年(令和6年)6月の改定では、段階的に増額する場合の引き上げ幅についても、目安が示されるようになりました。

3-2.工事費そのものが上がる

長期修繕計画は、あくまで「計画を立てた時点での見積もり」です。

人件費や資材価格が上がれば、同じ工事でも必要な金額は変わります。計画を立てたときの想定より工事費が上がっていれば、積み立てのペースを上げる必要が出てくることがあります。

3-3.計画は、見直されていくもの

長期修繕計画は、一度作って終わりではなく、定期的に見直すことが望ましいとされています。

建物の実際の傷み具合や、工事費の動き、修繕の優先順位。そうしたものを反映して計画を直すと、毎月の積立額もそれに合わせて変わる、ということが起こります。

🐈ニャッタ:「上がるのは、悪いことばかりじゃないんだね。将来のためにちゃんと見直そうとしてる、ってことでもあるんだ。」

🦉モーリー:「いいところに気づいたね。“上がること”そのものより、“なぜ上がるのか”“計画が実現可能か”を見ることが大事なんだ。」

4.「安い」がうれしいとは限らない

🦉モーリー:「ここで、ちょっと立ち止まりたい話があるよ。毎月の負担は、安いほうがうれしい。でも──」

修繕積立金が安いマンションは、毎月の負担が軽い一方で、将来の工事に必要なお金が十分に貯まっていない可能性があります。

積み立てが足りないまま、大規模修繕の時期を迎えると、一時金としてまとまった額のお金を集めることになったり、積立金を大きく引き上げることになったり、あるいは必要な修繕を先送りすることになったりします。

修繕が先送りされれば、建物の状態は少しずつ計画から遅れていきます。

国土交通省のガイドラインでは、長期修繕計画の計画期間全体で見た、専有面積1㎡あたりの修繕積立金の月額平均について、建物の規模などに応じた目安の幅が示されています。広告に記載された現在の月額だけで単純に比較できるものではありませんが、長期修繕計画の内容と合わせて確認するための手がかりになります。

🐈ニャッタ:「“安い”の裏に、“貯まっていない”が隠れていることがあるんだね。」

🦉モーリー:「そう。逆に、管理費が高めでも、そのぶん手厚いサービスや設備の管理が行き届いている場合もある。大切なのは、金額そのものより、その背景にある計画や管理の状況を見ることなんだ。」

5.毎月のお金は、価格にどう映るの?

🦉モーリー:「管理費や修繕積立金も、価格に影響する要素のひとつなんだ。」

5-1.買う人の「毎月の負担」として

マンションを買う人は、物件の価格だけでなく、住宅ローンの返済と、管理費・修繕積立金を合わせた「毎月いくらかかるか」で考えることが多いものです。

毎月の負担が大きければ、そのぶん物件価格に出せる金額は小さくなりやすい。賃貸に出して収益を得る場合でも、管理費や修繕積立金は毎月の支出として、手元に残る収益を小さくします。

同じような部屋でも、毎月のお金の重さが違えば、買う人からの見え方は変わってくるわけです。

5-2.管理や修繕の状況を映す手がかりとして

もうひとつの側面は、時間がたつほど効いてきます。

計画的に積み立てがされ、必要な修繕がきちんと行われてきたマンションと、積み立てが足りず修繕が先送りされてきたマンション。築年数が同じでも、建物の状態には差がついていきます。

「マンションは管理を買え」という言い方を耳にすることがありますが、それは、管理や修繕のあり方が、長い目で見た建物の価値とつながっている、という経験から来た言葉だと考えられます。

積立金が不足している場合、将来、積立金の引き上げや一時金の徴収、借入れなどが必要になることがあります。こうした将来負担の可能性は、購入を検討する人の判断にも影響し、価格に映り込むことがあります。

最近では、管理計画が一定の基準を満たすマンションを地方自治体が認定する管理計画認定制度という仕組みも始まっています(2022年〜)。管理の状態を外から確かめる手がかりは、少しずつ増えてきています。

5-3.ただし、単純に「だから高い・安い」ではない

とはいえ、「積立金が十分だから価格が高くなる」「管理費が高いから売れない」と、一対一で決まるわけではありません。

立地や広さ、市場の状況など、価格を動かす要素はいくつもあります。毎月のお金は、そのなかのひとつの要素として、買う人の判断に静かに織り込まれる。そんなふうに捉えるのがよさそうです。

6.広告を見るときの問い

マンションの広告で管理費・修繕積立金が書かれていたら、こんな問いを持ってみると、数字の背景が見えやすくなります。

  • 管理費と修繕積立金、それぞれいくらか。何に使われているか。
  • 修繕積立金は、均等積立方式か、段階増額積立方式か。今後の引き上げは予定されているか。
  • 長期修繕計画はあるか。いつ見直されたものか。
  • 積立金の残高は、計画とくらべて足りていそうか。滞納は多くないか。
  • 一時金の徴収や、借入れが予定されていないか。
  • これまでの大規模修繕は、いつ、どんな内容で行われてきたか。
  • 直近の総会議事録で、修繕や値上げ、滞納が話題になっていないか。
  • 長期修繕計画期間全体の平均額(専有面積1㎡あたり)を、国のガイドラインの目安の幅とくらべるとどうか。

こうした情報は、購入を検討する段階で確認できる資料に書かれていることがあります。

🐈ニャッタ:「ところで、その情報ってどこに書いてあるの?」

🦉モーリー:「管理会社が発行する重要事項調査報告書や、長期修繕計画、総会議事録などから確認できることが多いよ。」

🐈ニャッタ:「毎月払うお金を見ると、そのマンションの今の管理と将来の修繕をどう支えようとしているのかが見えてくるんだね。」

🦉モーリー:「そう。だから安いか高いかだけではなく、将来必要になる修繕に対して十分な準備ができそうかも考えてみることが大切なんだ。」

7.モーリーのまとめ

管理費は、日々の暮らしを支える「いまのためのお金」。修繕積立金は、将来の計画的な修繕に備える「これからのためのお金」です。どちらも、共用部分を支えるために、区分所有者が管理組合へ納めるお金です。

修繕積立金が上がるのは、最初から段階的な引き上げが予定されていたり、工事費が上がったり、計画が見直されたりするためで、「上がること」自体が悪いとは限りません。むしろ「安いまま」の裏に、積み立て不足が隠れていることもあります。

そして毎月のお金は、買う人の負担として、また建物がどう維持されてきたかの手がかりとして、価格の見え方に静かに映り込んでいきます。

ただし、毎月のお金だけで価格が決まるわけではありません。数字の高い・安いで決めつけず、その背景にある計画と歩みを確かめること。それが、このお金との付き合い方のようです。

参考にした原典

本記事の管理費・修繕積立金の区分、積立方式、長期修繕計画に関する記述は、主に国土交通省の公表資料を参照しています。なお、修繕積立金の具体的な目安額や制度の運用は改定されることがあるため、実際の検討にあたっては最新の資料をご確認ください。


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