森のひとコマ

森のひとコマ|森の梅しごと

モーリー

夜の森。木々のあいだから、ほそく月がのぞいている。

モーリーが、どんぐりランタンの下で、大きな瓶を抱えて歩いてくる。

古くから使っている“森のしごと用”の瓶──今年も出番がきたのだ。

かすかにきしむふたを開けると、モーリーはゆっくりとうなずいた。

まずは、葉にくるまれていた梅を、ひとつひとつていねいに水で洗う。

小枝の先でヘタをくるりと取るモーリー。

そっと鼻を近づけると、少し青くてすっぱい香りがする。

「この香りがするとね、“季節のバトン”が回ってきた気がするんだ。」

瓶のなかに、氷砂糖をぱらり。梅をころん。

静かな音が、順番に落ちていく。

そのあとから、ホワイトリカーが静かに流れこむと、

瓶のなかで季節がすこしずつ動きはじめた。

「“待つ”という仕事も、森のしごとなんだ。」

モーリーはそっとふたを閉め、静かに手を離す。

モーリーは小さく笑って、瓶にラベルを書く。「月の細い夜──今年も、漬ける。」

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