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実務の森|どうして金利が上がると、不動産価格は下がると言われるの?──金利の変化は、価格にどう映るのか

モーリー

🐈ニャッタ:金利が上がると、どうして家やビルの値段が下がるの?

ニュースを見ていると、

「金利の上昇で不動産価格に下押し圧力」

「利上げが不動産市況に影響」

といった言葉を目にすることがあります。

金利は、お金を借りるときの「借り賃」のことです。

一見すると、金利と不動産の値段は、別々の話のように思えるかもしれません。

でも不動産界隈では、金利の動きは不動産の価格を見るうえで、とても大切な手がかりのひとつとして扱われています。

ただし、「金利が上がれば、必ず価格が下がる」と単純に言い切れるわけではありません。

そこには、収益への期待、借入の負担、他の投資先との比較、そして将来への見通しなど、いくつもの要素が重なっています。

なお、金利の影響の現れ方は、家賃収入を目的とする投資用不動産と、自分で住むための住宅とで、少し異なります。投資用不動産では「収益から価格を考える」道すじが直接的にはたらき、自宅では、買う人の返済可能額や地域の需給を通じて影響が及ぶことが中心になります。この記事では、まず投資用不動産を例に考え、必要なところで自宅の場合にも触れていきます。

今日は、「金利が上がると価格が下がる」と言われるとき、その言葉の奥で何が起きていると考えられているのかを、ゆっくり見ていきます。

🐈ニャッタ:「モーリー、金利が上がると不動産が下がるって、よく聞くよ。お金を借りるときの話なのに、どうして値段に関係するの?」

🦉モーリー:「いい問いだね。金利は、ただの借り賃じゃないんだ。不動産の価格を考えるときの“ものさし”のひとつにもなっている。」

🐈ニャッタ:「ものさし?」

🦉モーリー:「そう。今日は、その数字がどんなふうに価格とつながっているのかを、一緒にたどってみよう。」

1.金利ってそもそも何だっけ? 〜お金の“借り賃”〜

🦉モーリー:「まず金利は、ものすごく簡単に言うと、お金を借りるときに払う“借り賃”のことなんだ。」

たとえば1,000万円を借りて、1年間の金利が2%なら、利息はおよそ20万円です。

金利が4%に上がれば、同じ借入額でも利息はおよそ40万円になります。

※これは元金が一年間変わらないと仮定した、いちばん単純な計算例です。実際の住宅ローンなどでは、毎月少しずつ元金を返していくため、利息のかかり方はこれとは異なります。

いずれにしても、金利が上がるということは、お金を借りるコストが上がるということです。

🐈ニャッタ:「同じ金額を借りても、金利が高いと返す利息が増えるんだね。」

🦉モーリー:「そう。そして不動産は、多くの場合、借入を使って買われる資産でもある。だから金利の動きは、不動産を買う人の負担に、直接ひびいてくるんだ。」

また金利は、不動産だけの話ではありません。

預金、国債、株式など、世の中のあらゆるお金の置き場所と関係しています。

金利が動くと、「お金をどこに置くのが有利か」という比較の基準そのものが動きます。

2.収益から価格を考えるという見方

🦉モーリー:「金利と価格のつながりを見るには、まず“収益から価格を考える”という見方を知っておくといいよ。」

不動産の価格の見方のひとつに、その不動産がこれから生み出すと見込まれる収益をもとに価格を考える、という考え方があります。

国土交通省が定める不動産鑑定評価基準では、これを「収益還元法」と呼んでいます。

収益還元法には、大きく「直接還元法」と「DCF法」の二つがあります。DCF法は、将来の各年の収益と売却額を、それぞれ現在の価値に割り戻して合計する、より細かい方法です。ここでは、考え方が分かりやすい直接還元法を例に見ていきます。

直接還元法では、一期間(一般に一年間)の純収益を、還元利回りで割り戻して価格を求めます。

式にすると、おおよそ次のような関係になります。

価格 = 一年間の純収益 ÷ 還元利回り

ここでいう「還元利回り」は、単に「投資家がほしい収益率」というだけのものではありません。金融市場の利回り、似たような不動産が実際にどんな利回りで取引されているか、将来の賃料がどう変わりそうか、その物件や地域がもつ不確実性など、さまざまな要素を踏まえて見定められる率です。

🐈ニャッタ:「収益を利回りで割ると、価格が出てくるんだ。」

🦉モーリー:「そう。ここで大事なのは、割る数の利回りが大きくなると、割り算の答えである価格は小さくなる、ということなんだ。」

たとえば、一年間の純収益が100万円だとします。

還元利回りを5%として割り戻すと、価格は2,000万円。

還元利回りを10%として割り戻すと、価格は1,000万円になります。

同じ100万円の収益でも、見定められる利回りが高くなるほど、計算上の価格は下がっていきます。

🐈ニャッタ:「収益が同じでも、利回りを高く見ると、価格は低くなるんだね。」

🦉モーリー:「うん。この“利回り”が、金利とつながっているんだ。次でその橋を渡ってみよう。」

3.「金利が上がると価格が下がる」と言われる仕組み

🦉モーリー:「金利が上がると価格に下押しの力がはたらく、と言われる背景には、大きく分けていくつかの道すじがあるよ。」

3-1.求められる利回りが上がりやすくなる

先ほどの式で、価格は「収益 ÷ 還元利回り」で考えられました。

この還元利回りは、まったく自由に決まるわけではなく、世の中の金利水準とも関係していると考えられています。

一般に、金利が低いときは、安全とされる預金や国債で得られる収益も小さくなります。そうなると、不動産に対して求める利回りも、相対的に低くてよいと考えられやすくなります。

逆に、金利が上がると、新たに預ける預金や、新たに買う国債などでも、ある程度の収益が見込めるようになります。すると、わざわざ手間やリスクのある不動産を持つなら、「これくらいの利回りはほしい」と求める水準も上がりやすくなります。

求める利回りが上がれば、同じ収益に対して計算される価格は下がる方向にはたらきます。これが、金利と価格をつなぐ中心的な道すじだと考えられています。

🐈ニャッタ:「金利が上がると、不動産にも“それなりの利回りがほしい”と思う人が増えて、その分、価格が低く見られやすくなるんだね。」

🦉モーリー:「そう。預金や国債といった“ほかの置き場所”でも収益が見込めるようになる、という比較の話とも、地続きなんだよ。」

※すでに発行されている固定金利の国債などは、金利が上がる局面で価格が下がることがあります。「金利が上がると価格が下がる」という関係は、不動産にかぎった話ではなく、収益から価値を考える資産に広く共通する見方です。

3-2.借入の負担が重くなる

不動産は、多くの場合、借入を使って買われます。

市場金利が上がると、これから新しく借りる人の借入コストは高くなります。また、変動金利型や固定金利期間選択型で借りている人は、契約条件に応じて、将来の返済負担が増える可能性があります。

一方で、全期間固定金利で借りている人の返済額は、通常、市場金利が上がっても変わりません。「金利が上がると返済が増える」という話は、おもに新規の借入や、変動・固定期間選択型の借入に当てはまります。

借入コストが上がると、買う人からすれば、「同じ収益なら、もっと安く買えないと割に合わない」と感じやすくなります。買える金額の上限が下がったり、買おうとする人が慎重になったりすれば、価格は上がりにくくなります。

🐈ニャッタ:「借りるのにお金がかかるようになると、無理して高くは買えなくなるんだね。」

🦉モーリー:「うん。ただ、すでに固定で借りている人の返済はすぐには変わらない。だから“誰の、どの借入の話なのか”を分けて見ることが大事なんだ。」

3-3.取引が落ち着くまでには時間がかかることもある

もうひとつ知っておきたいのは、金利が上がっても、価格がその場ですぐ下がるとは限らない、ということです。

最初は、売り手と買い手の見方が合わず、取引の件数が減ることがあります。価格そのものへの影響は、そのあとから少しずつ現れてくる、という場面もあります。

🦉モーリー:「金利は、世の中のお金の“基準点”みたいなものなんだ。基準点が動くと、すべての置き場所がそれと比べ直される。でも、みんなの見方がそろうまでには、少し時間がかかることもあるんだよ。」

4.でも「金利が上がれば必ず下がる」とは限らない

🐈ニャッタ:「じゃあ、金利が上がったら、不動産はいつも値下がりするの?」

🦉モーリー:「そう単純でもないんだ。価格は、金利だけで決まるわけじゃないからね。」

「金利が上がると価格が下がる」という関係は、あくまで他の条件が変わらないと仮定したときの、ひとつの見方です。

実際には、価格を動かす要素はいくつもあり、それらが同時に動きます。

価格を支える方向にはたらきうる要素

  • 家賃(収益)そのものが上がっていく場合は、価格の下押しを和らげることがある
  • 物価全体が上がる局面では、金利とともに賃料や資産価値も上がることがある
  • その地域に強い需要があり、買いたい人が多ければ、価格は下がりにくいことがある
  • 建築費の上昇、土地の稀少性などが、価格を下支えすることがある
  • 金利が上がった理由が「景気が良いから」である場合、収益への期待がそれを補うことがある

たとえば、金利の上昇と同時に家賃も上がっていけば、式の「収益」の部分が大きくなります。

割る数の利回りが上がっても、割られる収益も増えていれば、価格の下がり方はゆるやかになることがあります。

🐈ニャッタ:「金利が上がる理由や、家賃の動きによっても、結果は変わってくるんだね。」

🦉モーリー:「そう。だから“金利が上がる=価格が下がる”と機械的に決めつけるより、何が一緒に動いているのかを見ることが大事なんだ。」

5.金利の先に映る「不安」と「期待」

🦉モーリー:「金利の動きを見るときは、その先に映っているものまで、いっしょに見ておきたいね。」

金利が上がる局面では、数字の奥に、いくつかの見えにくい変化が隠れていることがあります。

5-1.返済計画への影響

変動金利や固定金利期間選択型で借りている場合、金利が上がると、将来の返済額が増える可能性があります。

購入時の利回りが高く見えても、返済の負担が増えれば、手元に残る収益は小さくなります。

「買うときの数字」だけでなく、「持っているあいだの数字」も動きうる、ということです。とくに借入額が大きい賃貸住宅経営では、金利上昇の影響が大きく現れやすいとされています。

5-2.売却のしやすさへの影響

金利が上がると、買おうとする人の力が弱まり、売りたいときに買い手が見つかりにくくなることがあります。

価格を下げなければ売れない、という場面も起こりえます。

🐈ニャッタ:「買うときも、持っているあいだも、売るときも、金利は関わってくるんだね。」

5-3.それでも残る「期待」

一方で、金利の上昇は、景気の回復や物価の上昇とともに起きることもあります。

その場合、賃料が上がったり、地域の活気が増したりして、収益への期待が高まることもあります。

🦉モーリー:「金利の上昇は、不安の合図にも、期待の合図にもなりうる。どちらの顔をしているのかは、その時々の背景を見ないとわからないんだ。」

6.金利を見るときの問い

金利と不動産価格の関係を考えるときは、次のような問いを持っておくと、数字の奥が見えやすくなります。

金利を見るときの問い

  • いまの金利は、何を背景に動いているのか(景気・物価・政策)
  • 金利が上がるとき、家賃や物価も一緒に上がっているのか
  • この用途の不動産は、借入を前提にどれくらい買われているのか
  • その借入は、固定か、変動か、固定期間選択型か。返済額はどこまで増えうるのか
  • これは投資用の不動産か、それとも自分で住む住宅か
  • その地域の需要は、金利が上がっても続きそうか
  • 将来売却するとき、買い手はどのような状況に置かれていそうか
  • 価格は、金利だけで動いているのか、それとも他の要素も動いているのか
  • その金利上昇は、一時的なものと考えられているのか

🐈ニャッタ:「金利って、“答え”じゃなくて、“何が動いているのかを考える入口”なんだね。」

🦉モーリー:「その通り。金利の数字を見たら、すぐに上がる・下がると決めつけるより、“なぜこの金利なのかな”と、その背景まで見ることが大事なんだ。」

7.モーリーのまとめ

「金利が上がると不動産価格は下がる」と言われるのは、主に次のような道すじがあるからだと考えられています。

ひとつは、収益から価格を考えるとき、求められる利回りが金利とともに上がりやすく、利回りが上がると同じ収益でも計算上の価格は下がる、という関係です。

もうひとつは、新たに借りる人や、変動・固定期間選択型で借りている人の返済負担が重くなり、買う力がしぼむこと。

そして、新たな預金や国債など、ほかの置き場所と比べ直されるようになること。

ただし、これは他の条件が変わらないと仮定したときの見方です。

家賃の動き、物価の動き、地域の需要、建築費や供給の状況、金利が上がった理由などによって、結果は変わってきます。価格への影響が、取引件数の減少を経て、ゆっくり現れることもあります。

金利は、価格を動かす大きな要素のひとつですが、価格を決める唯一の要素ではありません。

参考にした原典

本記事の「収益還元法」「直接還元法」「DCF法」「還元利回り」に関する記述は、主に国土交通省の不動産鑑定評価基準を参照しています。金利上昇と返済負担の関係は住宅金融支援機構の解説を、金利と資産価格・市場の関係については日本銀行の資料を参考にしました。なお、金利と価格の具体的な関係は、市場の状況や前提条件によって異なり、本記事は一般的な見方を整理したものです。

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