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実務の森|法務局編 相続登記って、どうして義務になったの?──登記簿で確かめる“登記上の所有者”

モーリー

“登記名義”が変わらないままだと、何が困るんだろう。

夜の森を歩いていたモーリーとニャッタは、夜の森法務局の前で足を止めた。

建物の入口には、 「相続登記が義務になりました🦊」と書かれた案内が静かに掲げられている。

ニャッタ
ニャッタ
モーリー
モーリー

今回みていくのは、「相続登記の義務化」という制度。

法務局には、登記簿や地図、公図など、不動産を調べるための資料が備えられている。

その入口として、「登記上の所有者」という考え方を、一緒にのぞいてみよう。

1. そもそも相続登記って、なに?

🐈ニャッタ:どうして、相続登記が義務になったの?

🦉モーリー:その理由を知るには、まず相続登記がどんな手続きなのかを知っておくと分かりやすいよ。相続登記は、亡くなった人から相続人へ、登記簿の名義を移すための手続きなんだ。

🐈ニャッタ:所有者が亡くなったら、自動で名前が変わるんじゃないの?

🦉モーリー:そこが、つまずきやすいところでね。所有権は亡くなった時点で相続人に引き継がれても、登記簿の名義は、相続人が申請しないかぎり、自動では変わらないんだ。以前は申請が義務ではなかったから、亡くなった人の名義のまま放置されることもあった。いまは原則として、期限内に申請することが義務になっているよ。

2. どうして、義務になったの?

🐈ニャッタ:でも、どうして今まで相続登記をせずに放置されることが多かったの?

🦉モーリー:相続では所有権は亡くなった時点で相続人に引き継がれるから、急いで名義を変えなくても困らないことが多かったんだ。売ったり担保に入れたりするときには登記が必要になるけれど、その予定がないと、そのままになりやすかった。

🐈ニャッタ:名義を変えないままだと、どうなるの?

🦉モーリー:そのままにしてると、登記簿からは、いまの所有者が分からない土地が生まれる。登記簿を見ても所有者が直ちに分からない土地や、所有者は分かっても、住所が分からず連絡が取れない土地——これらは「所有者不明土地」とよばれるよ。

🐈ニャッタ:所有者不明土地って、そんなにあるの?

🦉モーリー:平成28年度の調査などをもとにした推計では、所有者不明土地は全国で約410万ヘクタール、九州本島を上回る規模とされているんだ。

その後も調査は続いていて、国土交通省の令和6年の調査では、登記簿だけでは所有者の所在が判明しない土地の約63%は相続登記の未了、約29%は住所変更登記の未了が原因とされているよ。

🐈ニャッタ:原因の多くが相続登記未了なんだ……。所有者がわからないとなにが困るの?

🦉モーリー:所有者を探すのに、多くの時間と費用がかかる。公共事業が進めにくくなったり、売買のような民間の取引や、土地を使おうとする動きが止まってしまったりする。だから、相続を受けた人に登記を申請してもらうルールが、令和6年(2024年)4月1日から始まった。

3. じゃあ、どんなルールになったの?

🐈ニャッタ:具体的には、どんなルールなの?

🦉モーリー:不動産登記法が改正されて、相続登記が義務になったんだ。ポイントは次の四つだよ。

① いつまでに相続登記を申請するの?

🦉モーリー:基本は、相続で不動産を取得したことを知った日から、3年以内に申請するよ(不動産登記法第76条の2第1項)。

② 昔の相続も、対象なの?

🦉モーリー:そう。施行日より前に相続していて、まだ登記していない場合も対象になるんだ。期限は、次の二通りだよ。

  • 2024年4月1日以後に、相続で不動産を取得したことを知った人
    → その知った日から3年以内に相続登記を申請する義務がある。 
  • 2024年3月31日以前に相続して、まだ名義変更をしていない人
    → この人たちも義務化の対象。経過措置が設けられていて、原則として令和9年(2027年)3月31日までに相続登記をする必要があるよ。 

🐈ニャッタ:昔のことだから関係ない、ではないんだね。

③ 申請しないと、どうなるの?

🦉モーリー:正当な理由がないのに怠ると、10万円以下の過料の対象になりうる(同法第164条第1項)。

🐈ニャッタ:えっ、忘れていたら、お金を払うことになるの……?

🦉モーリー:そこは、少していねいに話すけど、いきなり、ではないんだ。登記官が違反に気づくと、まず「相当の期間を定めて申請してください」と催告する。それでも、正当な理由なく期間内に申請されないときに、はじめて裁判所へ通知される流れになっている。

🐈ニャッタ:正当な理由って、たとえば?

🦉モーリー:法務省が例として挙げているのは、相続人がとても多くて戸籍を集めるのに時間がかかる場合や、遺言の有効性や遺産の範囲が争われている場合、本人が重い病気の場合などだよ。具体的な状況に応じて個別に判断される、とされている。だから「絶対に払う」と身構えるより、「申請するのが原則で、難しいときは理由が見られる」と理解しておくのが正確だね。

④ すぐにまとまらないときは?──相続人申告登記

🦉モーリー:遺産分割がすぐにまとまらないときのために、相続人申告登記という手続きも用意されたんだ。自分が相続人であることを期限内に申し出れば、相続登記の申請義務を果たしたものとみなされる制度だよ。

🐈ニャッタ:じゃあ、それだけやれば、もう相続登記はしなくていいの?

🦉モーリー:そこは少し違うんだ。相続人申告登記は、あくまで遺産分割がまとまるまでの仕組みなんだよ。あとで遺産分割が成立したら、その日から3年以内に、その内容に沿った相続登記をあらためて申請する必要があるんだ。

🐈ニャッタ:なるほど。本当の名義変更とは違うんだね。

🦉モーリー:そう。登記簿に記録されるのは、申出をした相続人の氏名や住所だけ。所有権や持分が登記されるわけではないから、売ったり抵当権を設定したりするときに必要な通常の相続登記の代わりにはならないんだ。

🦉モーリー:それと、この制度で義務を果たしたとみなされるのは、申し出をした相続人本人だけ。相続人が何人もいる場合は、それぞれが申し出る必要があるよ。

参考|相続登記にかかる費用の目安
相続登記には、登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)、戸籍などの取得費用、司法書士への報酬(代理を依頼する場合)がかかります。司法書士に依頼する一般的なケースでは、総額10〜20万円程度が目安です。ただし、不動産の数や相続人の人数などによって費用は変わります。  

※一定の土地については、登録免許税の免税措置が適用される場合があります。

4. 登記簿から、何が分かるの?

🐈ニャッタ:でも、それって相続する人の話だよね。

🦉モーリー:そう思うよね。でも、ここ数年で変わったのは相続登記だけじゃないんだ。

相続登記の義務化に続いて、令和8年(2026年)4月1日からは、住所や氏名の変更登記も義務になった。

さらに、検索用情報を申し出ておくと、住所や氏名の変更が確認されたときに、本人の了解を得たうえで、法務局が職権で変更登記を行う仕組みも始まっている。

🐈ニャッタ:つまり、登記簿を今の状態に近づけていこうとしているんだね。

🦉モーリー:そうなんだ。そして、自分や、亡くなった人が所有していた不動産を一覧で確認できる所有不動産記録証明制度も、令和8年(2026年)2月2日から始まっている。こうした制度によって、登記簿は少しずつ現況に近づく仕組みへと変わってきているんだ。

🐈ニャッタ:でも、それがどうして大事なの?

🦉モーリー:登記簿は、登記上の所有者や権利関係を確かめるための基本資料だからだよ。

登記上の所有者はだれか。共有なのか。抵当権や地上権、賃借権は登記されているのか。

そうした事実を一つずつ確かめることが、不動産を理解する第一歩になるんだ。

🦉 モーリーのひとこと

相続登記や住所・氏名変更登記などの制度によって、登記簿は、いまの所有者や権利関係をより確かめやすい資料へと変わってきた。

不動産を調べるときは、まず登記簿で登記上の所有者や権利関係を確かめる。そこから、不動産の姿が少しずつ見えてくるんだよ。

この記事の原典(一次資料)

制度や運用は更新されるため、実務で利用する際は最新の原典をご確認ください。


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