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実務の森|古い家を壊したら、税金が上がるって本当?──住宅用地の特例という仕組み

モーリー

“建物があるあいだは、まけてもらえていた”

モーリーとニャッタは、森のはずれの古い一軒家の前を通りかかった。雨戸は閉じられ、庭の草は背丈ほどに伸びている。ニャッタは、その家をしばらく見上げていた。

ニャッタ
ニャッタ
モーリー
モーリー
ニャッタ
ニャッタ
モーリー
モーリー

今回は、そんな“建物があるあいだは、まけてもらえていた”という仕組みについて、モーリーたちと見ていこう──。

1.「住宅用地の特例」ってなに?

🐈 ニャッタ:土地が鍵って、どういうこと?

🦉 モーリー:土地にかかる固定資産税には、住宅が建っている土地の負担を軽くする仕組みがあるんだ。『住宅用地の特例』と呼ばれているよ。ざっくり言うと、税金を計算するときの『もとになる金額(課税標準)』を、本来の評価額より低く見てもらえる。住まいの土地の負担を重くしすぎない、という考え方だね。

🐈 ニャッタ:どのくらい、まけてもらえるの?

🦉 モーリー:広さで二段階に分かれていてね。一戸あたり200平方メートルまでの部分は『小規模住宅用地』といって、固定資産税の課税標準が評価額の6分の1。200平方メートルを超える部分は『一般住宅用地』で3分の1になる。都市計画税のほうは、それぞれ3分の1・3分の2だよ。

🐈 ニャッタ:6分の1って、ずいぶん大きいね。

🦉 モーリー:そう。だからこそ、この『まけてもらえる状態』が外れると、変化が大きく感じられるんだ。

🐈 ニャッタ:税金の話だと、住民票が必要って聞くこともあるよ?

🦉 モーリー:そういう制度もあるね。でも住宅用地の特例が見ているのは、『その土地が住宅の敷地か』なんだ。だから、この家みたいに誰も住んでいなくても、住宅として扱われているあいだは対象になることがある。

🐈 ニャッタ:人が住んでいるかどうかとは、少し別の話なんだね。

🦉 モーリー:そう。人が住んでいないだけで、直ちに対象外になるわけではないんだ。ただし、傷みが激しくて住宅と認められない状態になると、空き家でも特例の前提から外れることがある。そこは後でくわしく話すね。

📝 ポイント住宅用地の特例は、「住宅が建っている土地」にかかる軽減。割合は地方税法で定められた全国共通の枠組み(小規模=固定資産税1/6・都市計画税1/3、一般=固定資産税1/3・都市計画税2/3)。都市計画税は原則として市街化区域内などの土地・家屋にかかる。200㎡超の部分が3分の1になるのは住宅用地と認定される範囲内(家屋床面積の10倍までなど)での話で、併用住宅などには別の判定がある。なお建替え中の土地も、一定の要件を満たせば住宅用地として扱われる例外がある。

2.壊すと、なぜ税金が上がるの?

🐈 ニャッタ:じゃあ、家を壊すと……

🦉 モーリー:その土地は『住宅が建っている土地』ではなくなる。つまり住宅用地の特例から外れて、軽減がなくなる。その結果、土地の固定資産税が上がることがあるんだ。

🐈 ニャッタ:家がなくなったぶん、安くなりそうなのに……

🦉 モーリー:そう思うよね。でも、この特例は『住宅が建っている土地』を対象にした仕組みだから、建物がなくなると前提もなくなる。だから『建物を残しておいたほうが、土地の税金は軽い』という、少し不思議な状態が生まれることがあるんだよ。

🐈 ニャッタ:壊したら、すぐにその月から上がるの?

🦉 モーリー:そこは少しゆっくりでね。固定資産税は、原則としてその年の1月1日時点の状況をもとに、その年度の税額が決まるんだ。だから、1月1日の時点で住宅用地としての要件を満たしていれば、その年度は原則として特例が適用される。年の途中で解体した場合、その影響が土地の税額に表れてくるのは、ふつう翌年度からになるよ。

🐈 ニャッタ:なるほど。

🦉 モーリー:それと、ひとつ誤解しやすいんだけれど、建物のほうの固定資産税も同じ1月1日基準で決まる。年の途中で壊しても、その年度の家屋の税金はふつうそのまま残って、なくなるのは翌年度から。つまり『土地は翌年度から負担が増えることがある』『建物は翌年度から税金がなくなる』という二つの変化が、そろって翌年度から表れるんだ。実際に負担がどう変わるかは、土地と建物を合わせて見てみないと分からないんだよ。

🐈 ニャッタ:これが、古い空き家がなかなか壊されない理由のひとつ?

🦉 モーリー:そう考えられている要因のひとつだね。壊す費用もかかるうえに、壊したら土地の税金まで上がることがある。だったら、ひとまずそのままに……となりやすい。空き家が街に残っていく背景には、こういう仕組みも関わっているんだ。

📝 ポイント固定資産税は、原則として毎年1月1日時点の現況で判定される。1月2日以降、年の途中で建物を解体した場合、その年度の土地・家屋の税額は原則として変わらず、土地の負担増(住宅用地特例の解除)も家屋税の消滅も、影響が表れるのは翌年度から。

3.「6倍になる」って、本当なの?

🐈 ニャッタ:6分の1が外れるなら、税金は6倍になるってこと?

🦉 モーリー:よく『6倍になる』と言われるね。これは、小規模住宅用地の本則の課税標準が評価額の6分の1であることから生まれた、便宜的な言い方なんだ。でも、特例が外れたあとの土地には『負担調整措置』という別の仕組みがあって、課税標準にも上限がある。だから実際の税額が、そのまま6倍になるわけではないんだ。

🐈 ニャッタ:たとえば、どんなふうに違ってくるの?

🦉 モーリー:土地だけを見れば、課税標準の金額は大きく戻る。とはいえ非住宅用地となった宅地には課税標準の上限があるし、それまで家屋にかかっていた税金も消える。だから土地と家屋を合わせた『支払う合計額』はケースごとに違っていて、〝土地は上がるけれど、合計が6倍になるわけではない〟ということが起こるんだ。

🐈 ニャッタ:『6倍』は、仕組みの一部分だけをとりあげた数字なんだね。

🦉 モーリー:うん。特例の割合じたいは地方税法で決まっていて全国共通なんだけれど、実際の増減は、評価額や土地の利用状況、負担調整措置などによって変わってくる。それに、解体で住宅用地から非住宅用地に区分が変わる場合、自治体が似たような土地との均衡をふまえて計算することもある。だから『壊す=6倍』と決めつけるより、正確な金額は市区町村に確かめるのが大事なんだよ。

🦉 モーリー:それに、自治体によっては、老朽住宅の除却後も一定期間、土地の固定資産税を減免する制度や、解体費用の補助制度を設けていることがある。解体前に確認しておくと安心だね。建物を取り壊したときは、自治体への届出や住宅用地に関する申告が必要になることもあるよ。

📝 「評価額」と「課税標準額」の関係

金額意味
①評価額自治体が土地につけた価格。計算の出発点。
②本則課税標準額住宅用地特例を反映した金額(小規模=評価額の1/6、一般=1/3)。
③今年度の課税標準額②と、負担調整措置で用いる前年度課税標準額などを比べて決まる、実際に税率を掛ける金額。

流れにすると〔評価額 → 住宅用地特例 → 負担調整措置 → 今年度の課税標準額 → 税率を掛ける → 税額〕。『評価額×1/6×税率』で計算できる場合もあるが、負担調整が働く土地では完全には一致しない。

📝 ポイント「6倍」は小規模住宅用地の本則課税標準(評価額の1/6)からの戻りを指した便宜的な数字で、実際に支払う税額の増え方とは別物。住宅用地特例が外れて非住宅用地となった宅地には、価格の7割を課税標準の上限とするなどの負担調整措置があり、前年から急に変わらないよう調整される。そのため、土地の固定資産税が単純に6倍になるとは限らない。さらに家屋税の消滅もあるため「6倍ぴったり」とはいえず、具体額は自治体の試算で確かめるのが確実。

4.「壊さず放置」なら、ずっと安全なの?

🐈 ニャッタ:じゃあ、壊さないで置いておけば、ずっとまけてもらえるの?

🦉 モーリー:以前はそう考える人もいたみたいだね。でも、いまはそうとも言いきれないんだ。管理されないまま放置された空き家は、法律にもとづいて『特定空家』や『管理不全空家』に位置づけられることがある。

🐈 ニャッタ:かんりふぜん……?

🦉 モーリー:『管理不全空家等』は、2023年12月に施行された改正空家法で設けられた、市区町村による指導・勧告の対象だよ。今は問題がなくても、このままだと危険な空き家になりそうな状態のものを指すんだ。そして、こうした空き家に行政から『勧告』が出されると、住宅用地の特例が外れる対象になる。

🦉 モーリー:それに、勧告を受ける前でも油断はできなくてね。建物の傷み具合によっては、もう『住宅』とは認められない、と扱われる場合もある。そうなると、家があっても特例の前提から外れてしまうんだ。

🐈 ニャッタ:壊しても上がる、放っておいても上がることがある……

🦉 モーリー:だからこそ、空き家をどうするかは、税金だけでなく、安全や近所への影響まで含めて考える話になってきているんだ。『壊す』『直して使う』『手放す』──どの道にも、それぞれ事情がある。住宅用地の特例も、その判断材料のひとつなんだよ。

🦉 モーリーのひとこと

家を壊すと税金が上がる、と聞くと、ずいぶん理屈に合わないように感じる。けれどこれは、住まいの土地の税金負担をできるだけ軽くしておこう、という配慮の裏返しでもある。軽くしてもらえていたぶん、その前提がなくなれば、もとの負担に戻る。「壊すと税金が上がる」の正体は、そんな仕組みなんだ。

参考にした原典

この記事は、次の法令および官公庁の一次資料にもとづいて整理しています(制度・取扱いは2026年6月19日確認)。

地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」── 小規模住宅用地(一戸あたり200㎡までの部分)は課税標準を価格の6分の1、一般住宅用地は3分の1とする。 〔リンク〕

地方税法 第702条の3「住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例」── 小規模住宅用地は3分の1、一般住宅用地は3分の2とする。 〔リンク〕

地方税法 第359条「固定資産税の賦課期日」── 賦課期日は当該年度の初日の属する年の1月1日とする。 〔リンク〕

空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)── 「特定空家等」の定義、市町村による助言・指導・勧告等の枠組み。 〔リンク〕

空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号、2023年12月13日施行)── 放置すれば特定空家等になるおそれのある「管理不全空家等」を新設。勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地は、住宅用地特例の対象から除外される。 〔リンク〕

国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」── 構造上住宅と認められない場合、取壊し予定で使用見込みがない場合などは「住宅」に該当しないとする判断基準。 〔リンク〕

東京都主税局「住宅用地の申告等」「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」── 取壊し時の住宅用地等申告、非住宅用地(商業地等)の負担調整措置(価格の70%上限)、自治体の減免制度。 〔リンク〕

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