実務の森|家を持ってるだけで、どうして税金がかかるの?── 毎年届く、所有のコスト
モーリーとニャッタは、森のはずれの郵便受けの前にやってきた。
ニャッタの手には月の光に照らされた一通の封筒が。差出人は、夜の森市役所。封筒のおもてには「固定資産税」と書かれていた。
ねえモーリー、これ見て。家って、“持ってるだけ”で税金がかかるの?
うん。“持ってるだけ”にどうして税金がかかるのか。今回はそんな“固定資産税”の基本を、のぞいてみよう──。
1.固定資産税って、誰がいつ支払うの?
🐈ニャッタ: 「そういえば、この手紙はこの家がある町から届いてるんだね。」
🦉モーリー:「うん。固定資産税の納税通知書は、その不動産がある市町村から送られてくるんだ。住んでいる場所と、不動産のある場所が違う人は、別の自治体から届くこともあるよ。」
🐈ニャッタ:「そもそも、これって誰が払うものなの?」
🦉モーリー:「この記事で扱う土地や家屋を“持っている人”にかかる税金だよ。市町村(東京23区は都)が課す、地方税なんだ。地域の道路や消防などのサービスを支える財源としての側面と、資産を持っていることへの課税、と説明されることが多い。原則として、毎年1月1日の時点で“固定資産課税台帳”に所有者として登録されている人に、その年の分の税金がかかる仕組みになってる。」
🐈ニャッタ:「じゃあ、1月2日に売っても、その年はもとの持ち主が払うの?」
🦉モーリー:「制度のうえでは、1月1日時点の所有者が納税義務者だね。ただ、売買の現場では、年の途中で持ち主が変わるぶんを、買主と売主のあいだで日割りで精算する慣行もある。ただこれは当事者どうしの取り決めで、税のルールそのものとは別の話なんだ。」
💡 モーリーのフクロウメモ
固定資産税は、不動産を使わなくても、持っているだけでかかるんだ。空き家でも、更地でも、所有しているかぎり原則として毎年かかる(ただし、課税標準となるべき額が一定額に満たない場合は課税されない)。「持っていることによるコスト」は、価格を考えるときも収益を把握するうえで大切なんだ。
なお、固定資産税がかかる対象は、土地・家屋だけではなく、事業に使う機械などの“償却資産”も含まれる。この記事では、生活に身近な土地と家屋にしぼって見ていくよ。
2.金額って、どうやって決まるの?
🐈ニャッタ:「いくら払うかは、誰がどうやって決めてるの?」
🦉モーリー:「おおまかには、三つの段階を踏むと考えるとわかりやすい。まず①土地や家屋の“評価額”を決める。次に②そこから税の計算のもとになる“課税標準額”を出す。最後に③それに税率をかけて税額を出す、という流れなんだ。」
🐈ニャッタ:「税率って、何パーセントなの?」
🦉モーリー:「固定資産税の標準税率は1.4%とされている。“標準”という言い方をするのは、市町村が条例で別の率を定められる仕組みになっているからなんだ。だから、どこでも必ず1.4%とは言い切れないんだよ。」
なお、課税標準となるべき額が一定額(土地は30万円、家屋は20万円)に満たない場合は、原則として固定資産税はかからない(免税点)。この判定は、同じ市町村内で同じ人が持つ資産を合計して行われる。
📝 ポイントまとめ
・①評価額 → ②課税標準額 → ③税額、という順番で計算される
・税率は標準で1.4%。ただし自治体が条例で別に定められる
・「評価額がそのまま税金」ではなく、あいだに“課税標準”という段階がある
3.「評価額」って、売れる値段のこと?
🐈ニャッタ:「その“評価額”って、つまり“いま売ったらいくら”っていう値段でしょ?」
🦉モーリー:「ここが、よく混ざるところなんだ。固定資産税の評価額は、市町村が国の決めた基準(固定資産評価基準)にそって算定する、税のための価格なんだ。実際に市場で売り買いされる値段とは、別の評価額なんだよ。」
🐈ニャッタ:「別の評価額……同じ土地なのに?」
🦉モーリー:「同じ土地でも、どういう目的で使われるかで価格が使い分けられているんだ。宅地については、標準的な宅地の価格を、地価公示価格などの7割を目途に評価する仕組みになってるよ。」
🐈ニャッタ:「7割……。じゃあ“評価額×何倍かが売れる値段”って、思っていいの?」
🦉モーリー:「そう単純化したくなるけど、そこは慎重にいきたいね。まず、基準にしている地価公示価格そのものが、実際の売買価格と同じではない。そのうえで7割を目途にしているから、評価額から売買相場をそのまま逆算することはできないんだ。“だいたいの位置を知る手がかり”くらいに受け取っておくのが、実務に近いスタンスだと思う。」
💡 モーリーのフクロウメモ
世の中には、同じ不動産に対していくつもの“価格”がある。市場で売れる値段、地価公示の価格、相続税や固定資産税のための評価額──それぞれ、目的ごとに使い分けがなされている。
4.「住宅用地」だと、安くなるって本当?
🐈ニャッタ:「そういえば、“家が建ってる土地は税金が安い”って聞いたことがある。あれって何なの?」
🦉モーリー:「住宅用地の特例、と呼ばれるものだね。住宅の敷地として使われている土地には、税の負担をやわらげる仕組みが用意されている。具体的には、課税標準額を一定割合まで下げるものなんだ。」
🐈ニャッタ:「どれくらい下がるの?」
🦉モーリー:「広さで分けて考えるんだ。住宅一戸あたり200㎡までの部分は“小規模住宅用地”として課税標準が6分の1に、それを超える部分は“一般住宅用地”として3分の1になる、とされている。ただし、住宅用地として特例を受けられる面積には、原則として“家屋の床面積の10倍まで”という上限がある。第2段階の“課税標準額を出す”ところで、こうした調整が効いてくるんだ。」
🐈ニャッタ:「6分の1!けっこう大きいね。」
🦉モーリー:「うん。だからこそ、よく『更地にすると税金が上がる』という話が出る。建物を壊して住宅用地でなくなると、この特例が外れることがあるからだ。判断のもとになるのは、原則として“翌年1月1日時点でどういう状態か”。だから、取り壊しのタイミングでも扱いが変わりうる。ここも『取り壊す=必ずこうなる』と決めつけず、自分の土地がどうなるかは自治体に確かめる、という順番が大事だね。」
🐈ニャッタ:「住んでなくても、建物さえあれば安いままなの?」
🦉モーリー:「そこも一律ではないんだ。たとえば、空家対策の法律にもとづいて“特定空家等”や“管理不全空家等”として市区町村長から勧告を受けた土地は、定められた期限までに改善されないと、翌年度からこの住宅用地の特例の対象外になる、とされている。さらに、正式な勧告を受ける前でも、建物の使われ方によっては、そもそも住宅用地と認められない場合もある。“建物があるかどうか”だけでなく、“どう使われ、どう管理されているか”も関わってくる、ということだね。」
📝 ポイントまとめ
・住宅の敷地には、課税標準を下げる「住宅用地の特例」がある
・200㎡までの部分は6分の1、超える部分は3分の1(いずれも課税標準ベース/家屋の床面積の10倍までが上限)
・建物を壊したり、勧告を受けた特定空家等になったりすると、この扱いが変わることがある
5.毎年同じ額じゃないのは、どうして?
🐈ニャッタ:「去年とちょっと額がちがうよ。値段って毎年つけ直してるの?」
🦉モーリー:「土地と家屋の評価額は、原則として3年ごとに見直される。これを“評価替え”と呼ぶんだ。直近では令和6年度(2024年度)が評価替えの年で、その次は令和9年度(2027年度)とされている。あいだの年は、原則として前の評価額が引き継がれる。」
🐈ニャッタ:「じゃあ、見直しの年以外は、変わらないんだ?」
🦉モーリー:「だいたいはそうなんだけど、例外もある。あいだの年でも、土地の利用状況が変わったり、家屋を新築・増改築したり、地価が下落して評価額を据え置くことが適当でない場合に、評価額が下落修正されることがあるんだ。」
🦉モーリー:「それに、土地には“負担調整”という仕組みもある。これは、土地ごとの税負担のばらつきをならし、評価替えによる急激な負担増を抑えるためのものなんだ。だから評価額が据え置きの年でも、税額がじわじわ動くことがある。『土地の値段は下がっているのに税金は上がった』という不思議が起きるのは、こうした仕組みが一因となることがあるんだよ。」
📝 ポイントまとめ
・土地・家屋の評価額は、原則として3年ごとに見直される(評価替え/直近は令和6年度)
・あいだの年でも、利用状況の変化や新増築などで評価額が動くことがある
・土地の「負担調整」により、評価額が据え置きの年でも税額が動くことがある
・評価額が同じでも、税額が同じとは限らない
🦉 モーリーのひとこと
固定資産税は、毎年そっと届く“持ち続けることのコスト”なんだ。金額の裏には、評価額・特例・調整という、いくつもの段階が静かに重なっている。通知の税額だけを見て「高い」「安い」と決める前に、その税額がどう組み立てられているかを一度のぞいてみると、制度の仕組みが見えてくるよ。
モーリーのまとめ
✅ 固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・家屋を“持っている人”にかかる地方税
✅ 金額は「評価額 → 課税標準額 → 税額」の順で決まり、標準税率は1.4%(自治体が条例で別に定められる)
✅ 固定資産税の評価額は“税のための価格”で、売れる値段とは別物。宅地の評価では、地価公示価格等の7割が目途とされる
✅ 住宅用地には特例があり、200㎡までは課税標準6分の1、超える部分は3分の1(家屋の床面積の10倍までが上限)
✅ 土地・家屋の評価額は3年ごとに見直し(直近は令和6年度)。土地の負担調整などにより、据え置きの年でも税額が動くことがある
同じ不動産でも、目的によって“価格”はいくつもある。固定資産税の評価額は、そのうちのひとつ。それぞれの価格が何のためにあるのかは、図書館の本でもう少しゆっくりたどれる。
※ 固定資産税の納税通知書は、その不動産が所在する市町村(東京23区は都)から送られます。通知書には固定資産税とあわせて都市計画税が併記される場合があります。
→ 続きは図書館の棚で
「公的価格を読む ── それぞれの価格は、何のためにあるのか」
「不動産にかかる税金を読む ── 取得・保有・売却の三つの局面」
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このサイトでは、不動産の価格が立ち上がるまでの道筋を、「実務の森」を歩きながら、キャラクターの会話でたどっています。
いま読んだ話は、第五景「歩みをふり返る」で見渡すことのひとつです。歩いてきた道筋をふり返りながら、価格を見るということを、もう一度見つめなおす景へ。