不動産調査

実務の森|法上の道路かどうかを、どう調べるか

モーリー

図面・窓口・現地――3つを行き来する道路調査

🐈 ニャッタ:「前の道が建築基準法上の道路かどうか、ちょっと自分で調べてみたいんだ。何から見ていけばいいんだろう?」

🦉 モーリー:「いい質問だね。道路調査は、ひとつの資料だけでは完結しないんだ。図面と窓口と現地――この3つを行き来しながら、ひとつの像をつくっていく作業なんだよ。」

1. 「外見だけでは分からない」が大前提

舗装されていて車が普通に通れる道でも、それが建築基準法上の道路かどうかは、現地に立っただけでは判断できません。逆に、見るからに細い未舗装路が、所定の手続きを経て2項道路として扱われていることもあります。

道路調査の出発点は、

・「この道は、法42条のどの号に該当するか/そもそも該当しないか」

・「現況幅員と、法定上の幅員(指定された幅員)は一致しているか」

・「境界はどこか/セットバックは要るか」

・「所有者は誰か/通行・掘削に同意は要るか」

を、別々の情報源で確かめていく作業です。

2. 図面:オンラインで始めて、足りない所だけ窓口へ

(1) 自治体のGIS/指定道路図

建築基準法上の道路種別を示す「指定道路図」「道路種別図」「法42条道路図」などを、インターネット上で公開する特定行政庁が増えています(令和5年4月時点で、国土交通省の調査では215特定行政庁が指定道路図または指定道路調書の全部または一部をネット公開)。検索ワードは、

・「○○市 建築基準法 道路」

・「○○区 指定道路図」

・「○○市 GIS 道路種別」

などが入り口になります。地図上で道路をクリックすると、

・法第42条何項何号か

・位置指定の年月日・指定番号(5号の場合)

・指定された幅員の表記

といった情報が表示されることが多くなっています。自治体によっては公開していない、あるいは窓口閲覧のみという地域も残っているため、対象地の特定行政庁の取扱いをまず確認するのが安全です。

(2) 図面の「時点」に注意

オンラインで公開されている図面が、いつ時点の情報かは必ず確認しましょう。

・再開発エリアや新たに位置指定された道路は、地図に反映されるまでタイムラグがある

・GISの更新頻度は自治体によって幅があり、月次更新の地域もあれば、年単位での更新にとどまる地域もある

重要な判断を要する局面では、ネット情報だけで判断せず、最新の指定状況を窓口で再確認するのが安全です。

(3) 「都市計画図」「道路台帳」は別物

実務でしばしば混同されますが、「都市計画図」「道路台帳」「指定道路図」「指定道路調書」「公図」は、それぞれ根拠法令も役割も異なる別の図面・資料です。

図面・資料の種類主な役割(根拠法令)法42条の道路種別の記載
指定道路図/道路種別図建築基準法上の道路の位置・種別を表示(建築基準法)ある(メインの情報源)
指定道路調書指定道路の種別・指定年月日・位置・延長・幅員等を記載(建築基準法)ある(指定図と一対の資料)
都市計画図用途地域・建ぺい率・容積率・都市計画道路など(都市計画法)ない(用途地域等が主目的)
道路台帳道路法上の道路の区域・構造・管理情報(道路法第28条)原則ない(道路法上の管理用)
公図土地の地番・形状・隣接関係(不動産登記法)ない(地籍の図面)

🦉 モーリー:「『道路台帳に1項1号って書いてあるはず!』と思って探しても、のっていないんだ。それぞれの図面に役割があるから、目的に応じて使い分けてね。」

3. 窓口:図面では分からないことを確かめる

オンラインの図面でわからない情報は、特定行政庁の建築指導担当部署(建築指導課、建築審査課など)に出向いて確認するのが確実です。窓口に行く目的は、種別の最終確認に加えて、図面に載らない次のような事項を確かめることにあります。

(1) 位置指定道路(5号)の道路位置指定図

5号道路は、位置の指定を受けた際の「道路位置指定図」が特定行政庁に保存されています。

・ネット情報には載らない、図面上の境界・接続関係

・再建築に影響する「通行できる幅」や「道路の延長先」

・指定の有効性、過去の変更・廃止の経緯

これらは、窓口での図面閲覧と現地調査の両方が必要になることが多い情報です。なお、5号道路の所有者・私道持分そのものは、建築指導窓口ではなく、法務局で取得する登記簿・公図・地積測量図で確認するのが原則です。

(2) セットバックの要否と境界線の位置

2項道路では、「どこから後退するか」が現地だけでは判断できないことが多くあります。

・道路の中心線(原道の中心)がどこにあるか

・セットバック済の境界線が、いつ・どこまで決まっているか

・向かい側が崖地・河川などで、一方後退になっているか

現況測量・境界確定図と、窓口の指導内容、過去の建築計画概要書等を突き合わせて確認します。

(3) 未整備の都市計画道路・4号道路の進捗

4号道路や、未整備の都市計画道路にかかる土地では、いつ・どこまで整備されるかによって、将来の建築規模やセットバック範囲が変わる可能性があります。

・事業認可の有無と時期

・用地買収の進捗

・建築制限の内容(都市計画法第53条・第65条等)

これらは、特定行政庁の建築指導課ではなく、都市計画担当課で確認します。

(4) 「種類」だけでなく「境界」「将来」「個別運用」

オンラインで道路種別が分かる時代になった分、窓口の意義は「種別を聞きに行く」だけにとどまらず、種別の最終確認に加えて、境界の確定状況・将来の拡幅計画・43条2項などの個別運用基準をあわせて確認することに広がっています。

🦉 モーリー:「種別の最終確認はもちろん大切。そのうえで、境界や将来の拡幅、個別の運用基準まで踏み込んで聞ける窓口は、いまの実務でますます重要になっているんだ。」

4. 建築計画概要書:既存建物がある場合の手がかり

対象地に既存建物が建っている場合、過去の建築確認で作成された「建築計画概要書」が、

・前面道路の種別(42条何項何号か)

・接道幅員と接道長さ

・位置指定道路の指定番号・指定年月日

・配置図上で、セットバックや道路後退の手がかり

を示していることがあります。建築基準法施行規則に基づき、特定行政庁の建築指導担当窓口で閲覧・写しの交付を受けられる資料です(不動産登記関係の登記簿・公図・地積測量図は法務局、建築計画概要書は特定行政庁、と扱いが分かれます)。

ただし、

・更地や、概要書が保存されていない古い建物では確認できないことがある

・様式や記載内容は時期・自治体により異なり、セットバックや後退線が必ず記載されているとは限らない

・概要書作成時から制度・現況が変わっていることがある

という限界もあるため、補助資料として位置づけます。

5. 実務に必要な3ステップ

ステップ① 道路種別の確認

まずは自治体の指定道路図/GIS/指定道路調書で、対象地に接する道路の種別(1項1号〜1項5号、2項)を確認します。種別が分かると、その先で確かめるべき項目(セットバック、私道の権利、位置指定の有効性など)が見えてきます。

ステップ② 幅員と有効宅地面積の確認

現況幅員を現地測量で確認し、道路法上の管理幅員は道路台帳、建築基準法上の指定幅員・みなし境界は指定道路図・指定道路調書・窓口で確認します。2項道路ならセットバック幅、その他の道路でも境界確定状況を確認し、有効宅地面積(建ぺい率・容積率の前提)を把握します。

ステップ③ 窓口での最終確認

ネットと現地で組み立てた仮説を、特定行政庁の建築指導担当課・都市計画担当課に持ち込んで最終確認します。窓口で確かめる主な項目は次のとおりです。

・5号道路:指定番号・指定年月日・道路位置指定図・道路形状・変更廃止履歴(所有者・持分は法務局で登記簿・公図・地積測量図を確認)

・2項道路:セットバック済区間、中心線(原道)の位置、一方後退の要否

・4号道路:事業の進捗、建築制限

・43条2項:認定・許可の運用基準

これらは自治体ごとの運用差が大きいため、最後は窓口の判断を仰ぐのがもっとも安全です。

🦉 モーリー:「道路調査は、図面で全体像をつくって、現地で実感に直して、窓口で確信に変える――そんな流れだよ。」

6. モーリーのまとめ

・建築基準法上の道路かどうかは、図面・窓口・現地の3つを行き来して確かめる

・指定道路図/GIS/指定道路調書は出発点。ネット公開の有無や「時点」「更新頻度」は自治体差が大きい

・「都市計画図」「道路台帳」「公図」「指定道路図」「指定道路調書」は別の図面で、根拠法令と役割が違う

・窓口の役割は、種別の最終確認に加えて、境界・将来計画・個別運用・同意関係を確かめること

・既存建物があれば、建築計画概要書も補助資料として有用(取得先は特定行政庁、登記関係は法務局)

🦉 モーリー:「道路の調査に、ひとつの正解はない。でも『複数の情報源を重ねる』という姿勢は、いつでも変わらないんだ。」

【参照】 国土交通省「建築基準法上の道路情報の整備について」、国土交通省「建築基準法道路関係規定運用指針(平成19年7月策定、平成21年1月改定)」、国土交通省「道路台帳(道路法第28条)」、各特定行政庁の指定道路図・指定道路調書・道路位置指定図、建築計画概要書(建築基準法施行規則)

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