実務の森|どうしてこの家、こんなに安いの?──再建築不可
“ 安さの向こうにあるもの”

モーリーとニャッタは、夜の森不動産の前を通りかかった。よく似た広さで周辺環境も似ている家が並ぶ中、一軒だけ、すごく安い広告が目にとまった。よく見ると、片隅に「再建築不可」とある。
ねえモーリー。この家だけ、どうしてこんなに安いの?なにか、わけがあるのかな。
いいところに気づいたね。広告の片隅の『再建築不可』──この一言に、安さの理由がつまっているんだ。
今回は、そんな“再建築不可”の家がなぜ安く売られているのか、モーリーたちと見ていこう──。
1.「再建築不可」って、どういうこと?
再建築不可って書いてあるけど、この家は普通に住めるんだよね?
そう。いまある家に住めないわけじゃないんだ。問題になるのは、建て替えようとしたときなんだよ。
一般に「再建築不可」と呼ばれるのは、建物がなくなったあと(取り壊しや火災・倒壊などのあと)に、新しく建物を建てることが原則としてできない敷地のことだ。
いま建っている家の「建て替えができない」ことがポイントになる。
再建築不可になる理由はいくつかあるが、この記事では、そのなかでも代表的な「接道(道路への接し方)」の問題を見ていく。
※「再建築不可」は法律上の用語ではなく、不動産広告などで広く使われる表現です。
2.どうして建て替えできないの?──接道義務というルール
どうして建て替えできないの?
建物を建てるには、敷地が建築基準法上の道路に接していることが必要なんだ。これを接道義務というよ。
建築基準法では、建物の敷地は、原則として建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければならない、とされている(接道義務)。ここでいう道路は、幅4メートル以上のものが基本だが、幅4メートル未満でも「2項道路(みなし道路)」のように道路として扱われるものもある。建て替えのときには、この条件を満たしているかを確認する必要がある。だから、建築基準法上の道路に十分接していない土地は、現状、家が建っていても、建て替えの段階でつまずいてしまう。
接道義務や、そもそも建築基準法上の「道路」とは何かは、それだけで一つの話になる。くわしくは「フクロウハイツ編「接道義務」ってなに?」や、道路の種類をまとめた「建築基準法上の道路シリーズの入口」でモーリーたちが歩いているので、ここでは深入りしないでおこう。
💡 モーリーのフクロウメモ
「道路に接していない」と聞くと、ぽつんと孤立した家を思い浮かべるかもしれない。でも実際は、細い私道の奥や、昔ながらの入り組んだ町並みにある家など、一見ふつうの住宅でも、建て替えのときに接道義務が問題になることがある。見た目だけでは分からない、というのが大事なところだ。
3.なぜ価格が安くなるの?──安さの理由をたどる
そもそもの話だけど、建て替えられないと、どうして価格が下がるの?
いくつかの制約が重なるからなんだ。ひとつずつ見てみよう。
建て替えできない土地は、建物がなくなったあとの使い方が制約される。駐車場や資材置き場など、建物を建てることを前提にしない利用が中心になるためだ。さらに、金融機関や物件によって扱いは異なるが、建て替えできない土地は住宅ローンの審査が通りにくいとされ、現金で買える人など、買い手が限られやすい。買いたい人が少なければ、市場で付く価格も低めに出やすい。──こうした制約が重なって、価格が低くなりやすい。
価格が安いことは、その土地が抱える制約を映している。その土地をどう使えるか。その可能性まで含めて市場は価格を付けているんだよ。
4.本当に、建て替えできないの?──再建築の道はあるか
じゃあ、再建築不可だと、もう建て替えはできないの?
そうとも限らないんだ。一定の要件を満たせば、建て替えできるようになる場合もあるよ。
たとえば、一定の基準を満たし、特定行政庁による認定や、建築審査会の同意を得た許可の対象になると、再建築できる場合がある(建築基準法43条2項の認定・許可)。ただし、要件や手続きがあり、どんな土地でも使えるわけではない。この“救済”の中身は別の話になるので、くわしくは「43条2項の認定・許可」をのぞいてみてね。
なお、いまある建物に手を入れて住み続けられるか──増改築やリフォームがどこまでできるか──も、これはこれで一つの話になる。この記事では立ち入らず、別の記事で歩く予定だ。
5.どこを確かめればいいの?──手がかりの拾い方
この家がどうして再建築不可なのかは、どこで分かるの?
売買のときに渡される重要事項説明書や、役所で確かめられるよ。
不動産会社が仲介する売買では、重要事項説明で接道の状況や建築基準法上の制限などが説明される。
これらは、再建築不可とされる理由や、接道の状況を理解する大事な資料になる。さらに、役所(建築を担当する窓口)でも、敷地がどんな道路に接しているかを確かめることができる。建築基準法上の道路かどうかの調べ方そのものは「建築基準法上の道路かどうかの調べ方」にまとめてある。価格を考えるときは、『なぜこの値段なのか』を、こうした事実から読み解いていくのがいい。
安さだけじゃなくて、その土地がどう使えるのかを見ることが大切なんだね。
そう。いまだけじゃなくて将来その土地をどう使えるかが価格に映ってくるんだよ。
まとめ──“再建築不可”
- 再建築不可=いまの建物を建て替えることは原則としてできない。
- 主な理由は接道義務(敷地が建築基準法上の道路に2m以上接すること)を満たさないこと。
- 建物がなくなった後の利用方法が限られやすく、住宅ローンの審査も通りにくいなどの制約が重なり、価格が低めに出やすい。「安い=お得」と単純化はできない。
- 43条2項の認定・許可やセットバックなど、条件次第で再建築できる場合もある(要件・手続きあり)。
- 再建築不可かどうかは、重要事項説明や役所で接道の状況を確かめることで分かる。
📚 この記事が参照した原典
制度や運用は更新されます。実務で用いる際は、最新の原典をご確認ください。
- e-Gov 法令検索「建築基準法」(第42条 道路の定義/第43条 敷地等と道路との関係) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 国土交通省「接道規制のあり方について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001894185.pdf
- 国土交通省「建築基準法道路関係規定運用指針の解説」 https://www.mlit.go.jp/common/000214472.pdf
- 東京都都市整備局「第43条第2項に基づく認定・許可の取扱い」 https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku_kaihatsu/kenchiku_gyosei/gyosei/kijun/43
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