不動産調査

実務の森|【1項5号道路】位置指定道路

モーリー

―― 私道が法上の道路に変わる場面

実務での呼び方:位置指定道路、5号道路

🐈 ニャッタ:「分譲地で気に入った1区画があって、敷地の前の道は『私道』なんだって。でも『建築基準法上の道路』ってことになっているらしくて、どういう意味なんだろう?」

🦉 モーリー:「それはたぶん、5号道路――『位置指定道路』だね。私道なんだけど、特定行政庁が『この私道は建築基準法上の道路として使っていいですよ』と個別に指定したもの。私道が法上の道路に変わる、ちょっと不思議な仕組みなんだよ。」

1. 「1項5号道路」とは

建築基準法第42条第1項第5号に定められた、特定行政庁から「位置の指定」を受けた私道を指します。実務では「5号道路」「位置指定道路」と呼ばれます。

民間が宅地を分譲したり、小規模な造成を行ったりするとき、新たに道路を引く必要が出てきます。しかしその道が建築基準法42条上の道路に該当しなければ、原則として接道義務を満たせません。そこで、申請に基づき特定行政庁が、

  • 幅員4m以上であること
  • 構造基準(側溝、すみ切り、行き止まりの長さなど)を満たすこと
  • 位置・形状が図面で明確であること

といった要件を確認したうえで、「位置の指定」を行うと、その私道は5号道路として法上の道路に位置づけられます。

🦉 モーリー:「『位置指定道路』は、私道を『公的な機能をもつ道』として取り扱うために用意された制度なんだ。所有は私人のまま、機能だけが公道に近づいたイメージだよ。」

2. 条文を見てみよう

建築基準法 第42条第1項第5号

五  土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法(第六章に限る。)によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの

条文の構造を分解すると、

  • 「土地を建築物の敷地として利用するため」――建築のために整備する道路
  • 「政令で定める基準に適合する道」――構造基準が建築基準法施行令第144条の4で細かく定められている
  • 「築造しようとする者が」――民間の事業者・地権者などが申請者となる
  • 「特定行政庁からその位置の指定を受けたもの」――行政の能動的な「指定」が必要

3. 構造基準は施行令144条の4で決まっている

5号道路として位置指定を受けるには、建築基準法施行令第144条の4が定める基準を満たす必要があります。主な基準は次のようなものです。

  • 幅員4m以上(自治体によっては6m以上)
  • 原則として両端が他の道路に接続していること。ただし、すみ切り・転回広場の設置などの条件を満たせば、行き止まり(袋路状)の道路も認められる
  • 行き止まり道路は、原則として長さ35m以下、または途中に自動車の転回広場を設けること
  • 縦断勾配が12%以下、かつ、階段状でないこと
  • 道が交差・接続・屈曲する箇所にすみ切りを設けること、砂利敷など「ぬかるみとならない構造」とすること、側溝・街渠などの排水施設を設けることが、それぞれ別個に求められる

構造の細部は施行令と各自治体の運用基準でさらに具体化されています。「位置指定道路」と一口に言っても、地域差があるのはこのためです。

4. 「位置の指定」と「位置指定道路」の用語

実務でよく混同されるのが、「位置の指定」という用語の使われ方です。

  • 「位置の指定」――42条1項5号で、私道の位置を建築基準法上の道路として個別に指定する手続きを指す法令上の用語
  • 「位置指定道路」――その「位置の指定」を受けた私道(=42条1項5号道路)の通称

1項2号道路(開発道路)の場合は、都市計画法や土地区画整理法など事業の根拠法に基づく工事完了の公告等を経て建築基準法上の道路として扱われます。これは5号の「位置の指定」とは別の制度・手続きです。一般に「位置指定道路」と言えば5号道路を指す――この使い分けを覚えておくと、実務での混乱が減ります。

🦉 モーリー:「『位置の指定』は42条1項5号の法令上の用語。だから実務で『位置指定道路』と呼ばれていたら、ほぼ5号道路のこと――そう覚えておいて大丈夫だよ。」

5. 「つっこみ道路」の正体

宅地造成で時折出会うのが、街区の中に短く突き込まれた行き止まりの道――いわゆる「つっこみ道路」です。多くの場合、これは5号道路として位置指定を受けて整備された私道です。

ミニ開発で新たに数戸の宅地を分譲するときには、街区全体を造り直すような2号道路まではいらず、行き止まりの私道で各敷地への接道を確保する――そんなケースで5号が選ばれます。

🐈 ニャッタ:「街区全体の道は2号、ミニ開発の小さな道は5号、ってことなのかな?」

🦉 モーリー:「うん、そう覚えるとイメージしやすいよ。もちろん例外もあって、大きな開発の中で行き止まり部分だけ5号、メイン動線は2号、というふうに混ざることもあるんだ。」

6. 評価・取引で気をつけたい点

(1) 所有関係はそのまま「私道」

位置指定を受けても、その道の所有者が公的機関に移管されるわけではありません。所有者は引き続き、当初の地権者(または分譲時に分配された区画の購入者の共有)です。

そのため、

  • 通行や掘削にあたって、所有者全員の同意が必要になることがある
  • 所有者の死亡・相続で、同意取得の相手が分かりにくくなっていることがある
  • 共有持分の分け方(区画ごとの相互持合、全員での共有、特定の地権者単独所有など)で、運用が違う

といった私道特有の論点が残ります。詳しくは別記事「私道の通行・掘削同意」で扱います。

(2) 道路機能を一方的に損なうことは制限される

位置指定道路は私道ですが、建築基準法第44条(道路内の建築制限)や第45条(私道の変更・廃止の制限)により、所有者が一方的に道路の機能を損なう(道路内に建物を建てる、私道を勝手に廃止する等)ことは制限されています。所有者であっても、道路としての機能を実質的に失わせる行為は自由には行えない――この点が、通常の私道との大きな違いです(ただし、第三者の通行権が当然に発生するという意味ではないため、通行をめぐる個別の権利関係は別途確認が必要です)。

(3) 位置指定の「廃止」「取消し」

素材の中には「位置指定が失効する」と書かれることがありますが、正確には、位置指定は一度受ければ原則として効力が続くものです。

ただし、

  • 申請者からの廃止申請
  • 道路としての形状が著しく失われた場合の取消し

といった手続きで、位置指定の効力が止まることがあります。古い分譲地などでは、登記上の地番が分筆・合筆され、位置指定が及ぶ範囲があいまいになっている例もあります。役所の指定道路図と現地測量を照合し、有効性を確認することが大切です。

(4) 道路位置指定図の確認

5号道路は、位置の指定を受けた際の「道路位置指定図」や指定道路調書が、特定行政庁に保存されています。指定年月日、指定番号、図上の境界などが残されているため、実務調査ではこの図面を必ず取り寄せます。関係者の同意状況などは、申請書類・調書等で個別に確認します。

🦉 モーリー:「『位置指定道路』は、私道なのに法上の道路――ハイブリッドな存在なんだ。だから法的にも実態的にも、両方の顔を確かめる必要があるんだよ。」

7. モーリーのまとめ

  • 1項5号道路は、特定行政庁から「位置の指定」を受けた私道
  • 構造基準は建築基準法施行令第144条の4で定められている(幅員、行き止まり長さ、すみ切りなど)
  • 「位置指定道路」と言えば、一般に5号道路を指す
  • 所有はそのまま私人のため、通行・掘削の同意問題は残る
  • 44条・45条等により、所有者が一方的に道路機能を損なう行為は制限される

🦉 モーリー:「5号道路は、私道としての自由さと、公的な道路としての縛りが、同じ場所で同居している。その重なりを見ていくのが、5号道路調査の面白さなんだ。」

【参照】 建築基準法第42条第1項第5号、第44条・第45条(e-Gov法令検索)、建築基準法施行令第144条の4、各特定行政庁の道路位置指定図・運用基準

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