不動産調査

実務の森|「計画道路」の3つの顔

モーリー

―― 都市計画道路/1項4号/2項拡幅予定線(みなし道路境界線)

同じ呼び名で違う制度を指す、用語の交通整理

🐈 ニャッタ:「不動産屋さんは『計画道路』って言うし、市役所でも『計画道路』って言うし、登記の書類にも『計画道路』ってあって……でも、どれも違う場所の話みたい。なんで同じ言葉なのに、こんなに混乱するんだろう?」

🦉 モーリー:「うん、その違和感はとても正しいんだ。実は『計画道路』という言葉は、3つの違う場面で使われていて、それぞれ意味も根拠も違うんだよ。しかも、3つ目は厳密には『計画道路』ではなく、2項道路の将来後退線――いわゆる『みなし道路境界線』のことを指している、という点もポイントだよ。」

1. なぜ「計画道路」は混乱するのか

「計画道路」という言葉は、

・都市計画法に基づく都市計画道路

・建築基準法第42条第1項第4号の指定道路(いわゆる4号道路)

・建築基準法第42条第2項の道路の将来後退線(みなし道路境界線・後退線)

という3つの異なる場面で使われています。3つ目は本来「計画道路」と呼ぶよりも「みなし道路境界線」「後退線」と呼ぶのが正確ですが、現場では「2項の計画拡幅線」「将来の道路境界」などと俗称的に「計画道路」扱いされることがあり、これが混乱の主因になります。書類の見出しや会話の文脈では、どの制度を指しているかが省略されることが多いので、まず「どの制度の話か」を確かめるのが基本です。

🦉 モーリー:「『計画道路』と書かれていたら、まずは『どの制度の計画道路か(あるいは厳密には計画道路ではないか)』を確かめる――これだけで、見間違いはかなり減るよ。」

2. 3つの「計画道路」を並べてみる

呼び方根拠意味
都市計画道路都市計画法都市計画で位置・規模が決定された将来の道路。決定だけでは建築基準法上の道路ではない
1項4号道路(計画道路)建築基準法 第42条第1項第4号道路法・都市計画法等に基づく事業計画があり、2年以内に事業が執行される予定として特定行政庁が指定・公告した路線。指定後は建築基準法上の道路として扱われる
2項拡幅予定線(みなし道路境界線/後退線)建築基準法 第42条第2項厳密には「計画道路」ではない。セットバックによって将来4m幅の道路を確保するための境界線(中心線から2m)

3. それぞれを順に見ていく

(1) 都市計画道路(都市計画法)

もっとも広い意味で使われる「計画道路」は、都市計画法に基づき都市計画決定された将来の道路です。

・都市計画で位置・幅員・規模が決定されているが、現地ではまだ整備されていないことが多い

・都市計画決定だけでは、当然には建築基準法上の道路にならない――その敷地が接道義務を満たすかどうかは別問題

・都市計画決定区域内では、都市計画法第53条による建築制限(許可制)が及ぶ

・事業認可・承認が告示された後は、都市計画法第65条による建築・土地形質変更等の制限が及ぶ(53条の制限は65条の対象区域には及ばなくなる)

「都市計画図に色の付いた線で描かれている計画路線」は、ほとんどがこの都市計画道路です。事業のステージによって、

・計画決定のみ:53条許可で2階建て以下・地階なし・容易に移転除却可能な構造などの要件を満たせば建築可とされることが多い

・事業認可・承認の告示後:65条許可の対象。許可基準はより厳しくなる

・事業執行中:都市計画道路一般では用地買収・収用・工事の段階に入る。土地区画整理事業として整備される場合は、仮換地・換地処分などの段階に入る

と扱いが段階的に変わります。

(2) 1項4号道路(建築基準法)

建築基準法第42条第1項第4号にいう「計画道路」は、

・道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法等に基づく事業計画があり

・2年以内にその事業が執行される予定の道路として

・特定行政庁が指定し、公告したもの

を指します。「2年以内に道路が完成する」という意味ではなく、「2年以内に事業の執行(着手)が予定されている」という意味である点に注意します。なお、2年を経過しても、指定が取り消されない限り、4号道路としての効力は維持されるのが実務上の運用です。ポイントは、

・都市計画道路の一部が4号道路として指定・公告されることはあるが、すべての都市計画道路が自動的に4号道路になるわけではない

・4号道路として指定された部分は、接道義務上の道路として扱われ得る。ただし、現地が未整備の段階での建築計画は、別途、都市計画法53条・65条の許可、事業者との調整、現況の通行可能性なども併せて確認する必要がある

という、計画決定と4号指定の二段構えの関係です。

(3) 2項道路の将来後退線(みなし道路境界線・後退線)

ここまでの2つと違って、3つ目は厳密には「計画道路」ではありません。建築基準法第42条第2項の道路について、

・基準時の中心線から水平距離2mの位置にある、将来のみなし道路境界線(後退線)

・対面の敷地が将来後退することで、最終的に4m幅になる想定の道幅

を指す概念で、役所の指導図面や建築計画概要書には、「2項拡幅線」「みなし道路境界線」「後退線」などと表示されます。「計画道路」という言葉でまとめてしまうと、都市計画道路や4号道路と混同しやすいので、原稿や口頭でも極力この呼び方を使うのが安全です。

都市計画道路・4号道路と違って、こちらは事業計画があるわけではありません。沿道の建替えに合わせて少しずつ実現していく、いわば「日常の積み重ねによる将来形」です。

🦉 モーリー:「同じ『計画道路』の話でも、
  ・都市計画道路:『国や自治体が引いた将来の青写真』
  ・1項4号道路:『2年以内に事業執行予定として指定・公告された路線』
・2項拡幅予定線(みなし道路境界線):『建替えのたびに、セットバックによって実現していく道路境界線』

 ――根拠も、時間の尺度も、まるで違うんだ。」

4. 実務での見分け方

(1) 図面の種類で判別する

図面そこに描かれる「計画道路」
都市計画図都市計画道路(決定路線)。事業認可済区間は別途確認
建築基準法 指定道路図1項各号の道路種別と位置。1項4号道路(指定路線)や2項道路の位置を表示。2項道路の後退線・中心線まで明示されているとは限らない
指定道路調書・建築計画概要書・確定測量図2項道路の後退線・中心線、対象地でのセットバック後の境界などを補う
道路台帳(道路法)公道の管理が主目的。建築基準法上の道路種別やみなし境界線を直接示すものではない

指定道路図はあくまで道路種別と位置の概略を示す資料です。2項道路の具体的な後退線・中心線は、指定道路調書、建築計画概要書、確定測量図、そして特定行政庁の窓口で確認することが基本です。

(2) 担当窓口で判別する

・都市計画道路 → 都市計画担当課

・1項4号道路 → 建築指導担当課(特定行政庁)

・2項拡幅予定線(みなし道路境界線) → 建築指導担当課(特定行政庁)

窓口が分かれているため、「計画道路」という言葉だけで相談すると、話が噛み合わないことがあります。まずは「どの制度の話か」を整理し、その制度を担当する窓口へ確認するのが基本です。

5. 評価・取引で気をつけたい点

(1) 都市計画道路の上にある敷地

都市計画道路の計画線にかかる敷地は、

・都市計画決定区域内:都市計画法第53条の建築制限(許可制)が及ぶ

・事業認可・承認の告示後:同法第65条の制限(土地形質変更等を含む)に切り替わる

という形で、ステージにより制限の内容が変わります。「計画道路にかかっている」と聞いたら、計画決定のみか/認可済みか/事業化済みかを必ず確かめます。

(2) 1項4号道路の不安定さ

4号道路として指定・公告されていても、その後の事業遅延・縮小・中止により、指定が見直されることがあります。「指定されているから安心」と読み替えず、事業の進捗を都市計画担当課で別途確認するのが安全です。

(3) 2項拡幅予定線は、建替えにより実現していく

2項道路の将来後退線は、特定の事業計画があるわけではなく、沿道の建替えのたびに少しずつ実現していく性質のものです。「いつまでに4mになる」という見通しは立たないことが多く、

・対象地の現況幅員と、自分側の後退済み状況

・向かい側でセットバックが進んでいるか

を切り分けて確認します。

🦉 モーリー:「『計画道路にかかっている』という言葉に出会ったら、3つのどれかを必ず確かめる――そして3つ目は厳密には『計画道路』ではなく『みなし道路境界線』だと押さえておく。これが計画道路と向き合うときの最初の作業だよ。」

6. モーリーのまとめ

・「計画道路」という言葉は、現場では都市計画道路/1項4号/2項の後退線の3つの場面で使われる

・都市計画道路は、都市計画法に基づく将来の道路の青写真。決定だけでは建築基準法上の道路ではない

・1項4号道路は、道路法・都市計画法等に基づく事業計画があり、2年以内に事業執行予定として特定行政庁が指定・公告した路線。「2年以内に完成」ではなく「2年以内に事業執行予定」

・2項道路の後退線は、厳密には「計画道路」ではなく「みなし道路境界線・後退線」。基準時の中心線から2mが基準

・都市計画道路の事業執行段階は、用地買収・収用・工事が中心。土地区画整理事業として進む場合は仮換地・換地処分の段階に入る

・確認資料は、建築基準法側は指定道路図・指定道路調書・建築計画概要書、都市計画法側は都市計画図・事業認可情報。道路法上の道路台帳とは別物

・「どの計画道路か」を必ず確認し、根拠条文と担当窓口を整理する

🦉 モーリー:「同じ言葉でも、制度が違えば、見えてくる風景もまるで違うんだ。『計画道路』に出会ったら、まずどの制度の話か――そして本当に『計画道路』なのか――そこから確認しようね。」

【参照】
建築基準法第42条第1項第4号・第2項(e-Gov法令検索)/都市計画法第53条・第65条/国土交通省「建築基準法道路関係規定運用指針」およびその解説/国土交通省「都市計画による建築制限(53条・65条)」関係資料/各特定行政庁の指定道路図・指定道路調書、都市計画図、事業認可情報

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